マーケターとして活躍されているみなさまに、ご自身の経歴やマーケティングに携わることになったきっかけ、お仕事をするうえで大切にしていることなどを語っていただく『インタビュー企画』。
第13回目は、マーケティングや事業開発・運営をはじめとするコンサルティング会社を経営している、MANAGEMENT-K(※)の柏崎さんにお話を伺っていきます。
柏崎さんは株式会社NTTドコモの社員としてもご活躍されています。
柏崎 健太さん
MANAGEMENT-K 代表
(現所属 NTTドコモ コンテンツサービス部/Manager・Sports Marketing Professional)
スポーツから始まったマーケティング経験。上司の言葉と事業開発への興味が起業へと繋がる。
ーまずはご自身のご経歴を教えてください。
学生時代は陸上競技にのめり込んでいました。競技は110mハードルで、大学まで続けていたんですが、選手としての道ではなくビジネスの方に行こうと決意しました。
それまでずっとスポーツと共に生きてきたので、何かしらスポーツに触れられる、そして大きな会社に入りたいなという思いが強かったですね。その中でコナミグループに新卒で入社し、2013年まで8年くらい所属していました。
最初はスポーツクラブの新店舗の開発をし、その後本社で広報室の立ち上げに関わりました。広報室という名称の元、スポーツスポンサーシップを含めたブランディングの業務に関わりました。例えば、ロンドンオリンピックとかWBC、FIFAワールドカップや野球の日本シリーズなんかにも関わりましたね。
そういったスポーツスポンサーシップから、いかにサービスに落とし込んでいくのか、徹底的に考え抜いたことを覚えています。有名選手がオリンピックで良い成績を残し、それに紐付いた露出を仕込んだり、かなりスポーツマーケティングをやり込んだ時期だったと感じています。
その後はマーケティングに移行したんですが、これが初めてマーケティングに触れた瞬間だったと思います。
ちょうどソーシャルゲームが盛り上がってきた時期で、大手ソーシャルゲーム会社と交渉をしたり、そのゲームタイトルを知って頂くためのプロモーションも仕込みました。
いろんな仕事に携わる中で、やっぱり外資系のスポーツブランドで、スポーツマーケティングにもっと触れたい、という想いを強く感じていました。とはいえ、まだダイレクトにスポーツマーケティングの会社に所属したことがないので、スポーツブランドへの転職は難しそう。でも、このまま日系企業で働き続けるよりも、外に出てみてチャレンジしたい!と考えるようになり、その中で見つけたのが株式会社エアウィーヴでした。
エアウィーヴは、外資系のマーケティング業界でも有名な方が揃っていて刺激的だったこと、また当時はベンチャーの規模感でしたが、スポーツマーケティングにかなり積極的に取り組んでいることが決め手でした。ここでは先輩方に鍛えられましたね。マーケティングの真髄を叩き込まれた時代でした。
コンシューマ向け商材のマーケティングやスポーツマーケティングにガッツリと関わることもできて、やりたいことが詰まっている毎日でした。ただ、これから先のキャリアを考えた時、以前の上司に教えて頂いた「上にいくにはファイナンスかセールス等の数字に強くないと‥」という言葉を思い出しました。それが30代中盤くらいのタイミングで、事業開発とか事業運営に関わってみたいと考えるようになりました。
その結果、株式会社NTTドコモのDAZN for docomoをはじめとしたスポーツビジネス推進の部署に転職し、6年目になります。現在ではマーケティング全般にも携わりながら、新規プロジェクトにも関わっています。
併せて、個人的には2021年2月に元々やっていたスポーツマーケティングを中心としたコンサルティングの領域で「MANAGEMENT-K」という法人を立ち上げました。NTTドコモの仕事と合わせて、相乗効果を出しながら色々な領域でお仕事をさせて頂いています。
副業で『相乗効果が見込める』 会社が認めた、高め合える2つの仕事。
ー続いて、御社のサービス/柏崎さんが関わっているサービスについて教えてください。
まずはNTTドコモの仕事では、去年1年間は潜伏期間でしたね(笑)。新規事業や女子プロゴルフの対応をしていて、チャレンジして見直しての繰り返しを重ねていました。
この6月から別の動きが始まっていて、今年の秋口に控えた大きなスポーツビジネス事業を担当することになりました。
技術的にめちゃくちゃ新しい、というわけではないのですが、スポーツビジネスという面では非常に大きなプロジェクトになります。
MANAGEMENT-Kについては、法人を立ち上げる前にもスポーツビジネスに関するコンサルに関わっていたのですが、ありがたいことにご相談頂く機会が増え、2021年2月に正式に立ち上げました。
NTTドコモにもちゃんと話しをして、双方のビジネスの相乗効果が見込めるという判断になり、正式に副業として稼働させています。
大きな会社ですし、副業として認めてもらうのはちょっと難しいかなと思ったこともありました。でも、一度認可をもらうとものすごく信頼して後押ししてもらっているなと感じます。許諾のハードルが高い分、そのハードルを越えると絶対的に支援してもらえるのは嬉しいですね。
そういうこともあって、この2つの仕事を明確に分けているというよりも、双方の刺激がもう一方に適切に効果的に影響して、より良いものに昇華できているんじゃないかなと感じています。
ー御社のマーケティング活動における特徴はありますか?
やっぱり『最先端の、その中でも更に”先”を進んでいる』ということだと思います。
技術を提供している会社でも、その進んでいる度合いってあると感じています。その中でも、本業のNTTドコモはやっぱり先の先をしっかりと捉えている。
事業領域もかなり幅広いですし、そういった会社で事業を展開していくと、むしろ「最先端の、最先端」を見ざるを得ないといった方が正しいかもしれません。
まるで商社かのように、本当にあらゆる事業に関わっています。。エンターテインメントだったり、金融だったり、ここまで広く網羅する会社はそんなに多くはないと思います。
そんな最先端に触れていると、『”今”のスピード感にちゃんとついていかないと』と感じることがあります。
例えば、スポーツの試合で「どこが勝った」という情報って、いくら報道規制を敷いても数秒後にはSNSで拡散されています。情報の伝わり方がどんどん変わっているからこそ、最先端の”今”をちゃんと捉えて、自分の記憶や経験に盲目にならないように気をつけています。
進化が激しい世界だからこそ、"今"を見て、タイミングを見極めることが重要なポイント
ーご自身がマーケティングに関わる上で、大切にしていることは何ですか?
『”今”を見る』ということでしょうか。
会社が大きくなると、会社都合と言いますか、どうしても会社視点で物事を判断してしまうことが出てくると思います。でも、それではいけないのです。
例えばスポーツブランドのNIKEでは「Start to consumer」という言葉があります。コンシューマー(お客様)の感覚から始める、徹底的な顧客視点に立つということです。
これはお客様自身を見るのももちろんですし、お客様が”今”どうしたいのか、その時間軸も含めてちゃんと捉えていくことです。
ちょっと情報収集を怠けてしまうだけで、お客様はあっという間に先に行ってしまいますからね。
あともう一つは『タイミングを見極める』ということです。
実は、2020年にバーチャルでスポーツの応援をしよう、という企画を実施しました。コロナ禍で会えない友人と一緒に楽しめますし、僕の一押しの企画だったんですが、正直に言うとそこまで盛り上がりませんでした。
今でこそ、バーチャルとかVR、AR、XRなど、みなさんの身近でも耳にすることが出てきたと思いますし、ゲームの機器もたくさん開発されてきました。ただ、2020年ではまだちょっと早かったんです。知ってはいるものの、まだそこまでみなさんの関心が向いてきてはいなかった。
まさに、『タイミング』が合わなかったんですよね。
早すぎてはいけない。そしてもちろん、遅すぎてもいけない。
この仕込みのタイミングを見極めるのは、とっても難しいですが本当に重要なポイントだと胸に刻んでいます。
ーご自身が目指すマーケティングの姿について教えてください。
目指したい姿は3つあります。
まず一つ目はマーケターとしての目標で、「マーケティングを”楽”」にすることです。
これは、溢れる情報の中でお客様が苦なく欲しいものを選び抜けるようになることです。
実際の店舗でも、オンラインでも、たくさんの商品や情報が溢れています。その中で本当に自分の好みに合う欲しいものを見つけ出すって大変なことなのです。
一方で、例えばオーダーメイドの洋服だったり、その人の”欲しい””好き”をダイレクトにそのまま提供できれば、探し出す苦労はないですよね。
情報が瞬時に精査されたり、その時の気分とか感情までを察知して、そのタイミングのお客様に最適なものを提供する。
商品や音楽、香りなどさまざまなものをお客様個人に合わせていけるのが、マーケティングの究極の姿なのではないかと感じています。
2つ目は、個人寄りですが「経営者」としてちゃんと立っていきたい。
先ほどもお話した通り、2021年2月からMANAGEMENT-Kと言う法人を立ち上げました。まだ小さい規模ですが、それでも請求書を発行したり、一連のお客様とのコミュニケーションを自分で体験するととても感動します。
大きな組織では分業になっている業務ですが、本当に「お客様が自分たちを評価して、依頼して、支払ってくれている「誰かのためになっている」と言う感覚ををダイレクトに感じることができます。
この感情が、やっぱり経営の醍醐味なんじゃないかなと思います。
そして3つ目は、「デュアルであること」です。
これまでお話してきた通り、今は本業と副業と言う複数の道を歩んでいて、どちらも大事です。本業の規模が大きいから余計に感じるのかもしれませんが、事業をどん!と大きくしていく、それがみなさんの生活や日本全体、世界を動かしていくことにも繋がっていきます。
そういった刺激を受けつつ、自分の得意とするスポーツマーケティングにも自分のペースで関わっていく。この両方が良い刺激になり合っています。
外資の企業ですと、敢えて転職を重ねることで年収をどんどん挙げていく、と言うキャリア形成の方法があります。『この役職を狙って、これくらいの年俸になりたい』と言うような。
でも、この方法は今の40代後半以上の方の年齢層で止まってしまうのではないかと感じています。
会社を移ることが珍しくない今、どれほどのパフォーマンスを出せるのかが一番重要になります。いわゆる、ジョブ型の働き方ですよね。パフォーマンスを出せる人は引く手あまたで、色んな会社から欲される。
どこでも渡り歩いていけるような、本当の実力が必要になってきます。
だからこそ、一つの道・価値観だけに染まりすぎずに、色々な刺激の中にいること、僕の場合は本業と副業と言う二つの刺激を常に受け続けていくことが大切だと感じています。
チャレンジするなら思い切って!命綱を断ち切るからこそ、その先に見えるものを目指してほしい。
ー読者のみなさまへの一言
二つお伝えしたいことがあります。
まず一つは、『”今”を見る』ということです。
これは先ほどのマーケティングで大切にしていることにも繋がりますが、それ以外でも気にして頂きたいなと思います。
例えば、キャリアを作っていく時、遠い将来を思い描いて積み上げていこうとすることもできますよね。
もちろんそれも大切ですが、今何を学べるのか、今周りにいる人が何をしていてそれに魅力を感じるのか、といった”今”を見て欲しい。精一杯過ごす”今”の先にしか、未来は作れないと思っています。僕も30歳くらいの時に先を見据えてキャリアについて悩んだ時期がありましたが、まずは”今”その一瞬を思い切り過ごすようにしたことで、抜け出すことができました。
キャリア以外でも、とてもお勧めの考え方です。
続いて二つ目は、『命綱を切る』ということです。
安定した後ろ盾がある中で、安寧な環境にいるのではなく、チャレンジするぞ!と決めた時には清水の舞台から飛び降りるかのごとく、退路を絶って飛び込んでみて欲しいです。僕もそうして来ました。もちろん怖いし、不安もあると思います。でも、そういった経験でいくら傷がついても、ズタボロになっても、絶対に中身は濃く磨かれていきます。その方が将来的にも良い経験に繋がると思います。無理やり厳しいところに飛び込む必要はないですが、「ここは勝負時だ!」というタイミングがきたら、ぜひ思い切って飛び込んでみて欲しいなと思います。きっと皆さんの大切な一歩になるはずです。
※MANAGEMENT-K:https://m.facebook.com/ManagementK2/
(ご相談・お問い合わせはこちらまで)
ー取材後記
今回はマーケティング(スポーツ)を初めとするコンサルティング会社を経営している、MANAGEMENT-Kの柏崎さんにインタビューさせて頂きました。
ご自身の選手のご経験から、今も深くスポーツマーケティングに関わっている柏崎さん。
技術の発展やデジタル環境の整備で驚くほどの進化を遂げているスポーツマーケティング業界。”今”を見つめ続けながらチャレンジを重ねることで、その進化の最先端を歩まれていらっしゃいます。
止まらない進化の根本は、みなさまへのメッセージでも頂いた『時流を捉える(”今”を見る)』ことと『退路を絶って挑戦する勇気(命綱を切る)』なのでしょう。
立ち止まらず、驕らず、敢えて変わり続けること。私たちの毎日のマーケティング活動の中でも気をつけていきたいですね。