マーケターに聞いてみよう!
Vol.5_カラビナハート株式会社 吉田 啓介さん

マーケターとして活躍されているみなさまに、ご自身の経歴やマーケティングに携わることになったきっかけ、お仕事をするうえで大切にしていることなどを語っていただく『インタビュー企画』。

第5回目は、マーケティング全般のご支援やSNS運用のサポート、マーケティング人材の紹介事業を運営する会社、カラビナハート株式会社の吉田さんにお話を伺っていきます。


吉田 啓介さん
カラビナハート株式会社
Vice President

2020年5月に株式会社カラビナハート入社。企業のSNS活用や効果の可視化、組織作りなどを支援するマーケティングコンサルタント。現在は約10社のTwitter・Instagramのアカウント運用や活用コンサルを行っている。

2020年4月までは株式会社すかいらーくホールディングスのマーケティング本部にて、広告宣伝やロイヤリティプログラム、オウンドメディア全般のコンテンツ管理の責任者として従事。2017年にブランドごとに7つのSNS公式アカウントを立ち上げてチーム化し、2年間で合計210万フォロワーに成長。ビジネス貢献も可視化して、その経験が現職への転職につながった。


営業と店舗接客で身につけた【1to1】のコミュニケーション。ダイレクトにお客様を知ることが、キャリア選びのきっかけ。

ーまずはご自身のご経歴を教えてください。

社会人としての経験は、地元北海道での教育商材の出版社からです。
学生時代はずっと出版業界や新聞メディアでの仕事への憧れがあったのですが、なかなかの狭き門に阻まれ、少しでも出版系に近い仕事をしたかったんです。最初は全員営業で、その後成績が良い人は希望部署に異動できるという会社だったので、まずは営業を必死に頑張りました。『個人のお宅にアポ無しで訪問し商材を販売する』というもので、なかなか苦労をしたことを覚えています。ただ、お話をしていると前のめりになってくれる瞬間があったり、刺さるポイントがわかるタイミングがあるんですよね。1対1で膝を突き合わせて話して、人の気持ちが傾く瞬間を感じることができたのは非常に大きな経験でした。今振り返ると、この営業での1対1のコミュニケーションが僕の原体験なんだと思います。

営業を1年ほどやった後、札幌のタウン情報誌の出版社に転職しました。紙のタウン情報誌で、地元の新店情報や季節の料理メニューを紹介したりしましたね。お店に連絡してアポをとり、インタビューをして、カメラマンに写真撮影してもらって、その内容を元に記事を書いて、といういわゆる記者っぽい仕事をしていました。記事にもある程度構成があったり、ヒットしやすいネタなんかもありまして、この時期にライティングの技術を学べたかなと感じています。

この取材をしているうちに、飲食店の情報を伝えるだけではなく自分でも提供してみたいなと感じるようになったんです。それに、飲食産業も、元々志望していた出版業界も、東京が中心なんですよね。そこから『東京で働きたい、飲食店に関わりたい』という想いが募り転職活動を始めたんです。
色々と探していたところ、すかいらーくの首都圏勤務枠で募集をしていて、志望し、入社しました。ただ、勤務が首都圏や東京のはずだったのですが、最初の赴任地が宮城県だったんです。『北海道の人がいきなり東京で揉まれるのは、、、』という人事部の気遣いだったようですが(笑)。店舗では正社員は僕1名で、アルバイトで高校生から主婦の方、フリーターの方など30名くらいをマネジメントする店長として働きました。調理や接客など店舗に関わる全ての業務を担当することもあり大変なこともありましたが、お客様が目の前にいてダイレクトに反応を見られることが楽しく、充実して働いていました。そこから6年ほどしたタイミングで、突然異動の辞令が出て、本社東京のマーケティング本部に配属されました。ここがマーケティングとの出会いでした。

マーケティング本部では、まず最初にインストアメディア事業という店内にあるテーブルのシールや店頭の広告枠など、いわゆる店舗のメディア化をした際の広告枠を販売するというBtoBの企画営業がメインでしたね。そこで初めてマーケティング・広告の基礎を勉強しました。
その後1年半ほどしてプロモーション部門に異動になりました。こちらでは、お客様に店舗に来てもらうための宣伝販促をしました。クーポンを作って再来を促すような対策をしたり、チラシのデザインや配布エリアを決めたりしていました。クーポンは、ユニークの番号を記載しておくことで明確な効果計測ができたんです。そしてとても効果があったんですよ。。やっぱり割引って効くんですよね。
ただ、しばらくして「こんなに美味しいものを割引しないで、他の対策を取ることでお客様に来ていただくことはできないか」と考えるようになりました。せっかく美味しいものなので、値引きしないでなんとかならないかなと思ったんですよね。

あと、ファミレスとかチェーン店って、一般的に”目的的来店”が作りにくいんですよ。「再来週のランチはファミレスに行こう」はあまり考えないないじゃないですか。それよりも「どこに行こうか」っていう話をしながら歩いていて「今日はここでいいかな」という決められ方をします。「○○のために行く」という特徴的なものが弱いんです。
なので、もう少し目的を持って来てもらうことはできないかと工夫してみました。来てもらうことができればお料理自体は美味しく召し上がって頂ける自信はあるので、まずは来店理由を作らなきゃと。そのためにアニメキャラクターとタイアップをしたり、来店ポイントをためたらもらえるロイヤリティプログラムを作ったりしました。SNSもその頃から強化して、「昼と夜以外の空いている時間はテーブルを広々使って仕事とか勉強してもいいですよ」とか「賑やかな場所だから、お子様連れてガヤガヤしてもいいですよ」というプロモーションのメインにはなりにくいけど来店動機としてニッチに魅力を感じてもらえるような内容を発信していました。

もちろん、クーポンが明確に効果がある中で「SNSもやった方がいい」という僕の方針に賛否がありましたが、最終的には数値的にも結果を出せて認めてもらうことができました。
ただ、ここで一つのゴールに来たなという感じがあったんです。そこから役員やCMOを狙う、という道もあったと思うんですが、それよりももっと現場に近い仕事がしたいなと。そういうSNSを使ったマーケティングの取り組みがまだできていない場所でやってみたいなという想いが芽生えて、そのタイミングで相談したのが、現カラビナハート代表の森さんでした。
当時から「マーケターの集い」というコミュニティを運営していて、隔月で勉強会をやっていたんです。その中で色々話す機会がありまして、ちょっと相談してみたところ、「それなら一緒にやらないか」という話になり入社を決めました。「事業会社でその1社を成功させるのもいいけど、支援する側になったら10社をハッピーにできるんじゃないの?」という一言が印象的でしたね。

マーケティングの内製化を目指してサポートを続けるカラビナハートの支援サービス


ー続いて、御社のサービス/吉田さんが関わっているサービスについて教えてください。

マーケティング全般のご支援と、マーケターの人材紹介を運営しています。

マーケティングご支援の中では、最近ではECとSNS領域を強化しています。現在7名いるメンバーで4名がSNSを担当していて、ご相談も多いですね。

SNS運用ご支援でご相談頂いたところから始まり、実はECに誘導するためにSNSを強化したいとか、根本的なマーケティング課題の改善のお話になっていくこともあるんですよね。SNSだと対策を開始してから効果を感じ始めるまでにどうしても半年くらいはかかってくるので、ある程度の期間ご一緒しているとその裏側にあるお悩みをお伺いする機会も多いのかもしれません。

また、SNSであれば最終的に内製化を目指すための支援も多いです。外部の会社に委託することもできますが、やっぱりサービスやお客様を一番分かっているのはその企業のみなさまなので、社内でちゃんと仕組みが回るようにするのが理想だと思っていて、頑張ってお手伝いして、お客様のお手元での運用が早くできてしまうほどお別れも早くなってしまうというのが寂しいところではあります。

ー御社のマーケティング活動における特徴はありますか?

代表の森さんが運営している「マーケターの集い」というコミュニティが基盤にあることでしょうか。
現在は700名以上のメンバーがいて、1ヶ月半に1回くらい毎回テーマを変えて勉強会を開催しています。コロナ禍ではオンラインで、その前はリアルで開催していまして、その会の合間に会話をして吉田の存在や支援内容に興味を持ってもらって、相談をいただく流れが多いです。
それまでは森さんが一人でやっていたので、特にSNSに関してはご相談頂いても他社さんを紹介したり、お断りすることが多かったようです。そこから僕が参画して、その後メンバーが少しずつ増えていく中で、ようやくこれまでお断りしていたご案件もお受けできるようになってきた、という感じでしょうか。

森さん自身、人との繋がりが広く、密なので、そこからのご相談がほとんどだというのが特徴なのかなと感じます。

目的を持つことで、道筋が見えてくる。”手段”を目的化せず、ゴールを見極めることがポイント


ーご自身がマーケティングに関わる上で、大切にしていることは何ですか?

やっぱり「ちゃんと目的を持ちましょう」ということです。
これは自分自身がやるとしても、他の企業さんのお手伝いをする時にも大切にしています。

先ほどのクーポンもそうですし、プロモーションをするにしても何が目的なのかを明確にしておくことで、目指すゴールが共有しやすいですよね。

そしてその目的が「お客様にとって利益がある」のが大切です。
会社として、ブランドとして伝えたいことがあるけど、多分お客様からしたらそこは価値じゃないよねということも多いんです。企業側が気づいていない”当たり前のこと”がお客様にとっては凄いことだったり、大きな価値があったりするんです。そんなお客様・受け手の気持ちにたくさんヒントがあるんだろうなって思うんです。
その価値に気付くためにお勧めなのが、「エゴサーチ」です。お客様がどんな風に見てくれているのか、何に注目してくれているのか、実は現場のメンバーなんかは結構見てるんですよ。本当は経営陣にこそ見てほしい生の声ですよね。
とある企業では、社長室の前にモニターを設置して、ブランドワードが含まれたTwitterの投稿が一日中流れている環境を作りました(笑)。強制的に社長にTwitterを見せるわけです。普段アンケートを取っても、その合計数やn数にばかり目が行きがちなんですが、いざ目の前にTwitterの投稿が出てくると見ちゃうんですよ。簡単ですし、お金もかからないし、すぐできるのでぜひ試してみてほしいです。

それに、お客様の投稿を見ることでマーケティングのための情報収集もできるんです。SNS運用において「公式アカウントは何を発信したらいいんだろう?」と悩むケースもあると思います。そんな時には、お客様の投稿を見ればいいんです。どんなところに興味を持って、どんな意見を発信しているのか、ヒントがいっぱい詰まっていますよ。

ーご自身が目指すマーケティングの姿について教えてください。

自分自身の事で考えると、キャリアプランを敢えて細かく決めすぎない、という所かと感じます。
僕もいろんな仕事を経験したし、社内の部署異動がなければマーケティングにも出会っていないわけです。でも今はマーケティングって楽しいと思っていますし、もっと楽しい別の仕事にも出会えるかなという期待もあります。どんどん変わっていくこの世界で、3年後は全く違うかもしれない。だからこそ、敢えて細かく決めすぎず、その時自分が興味関心を持ったことを信じてコツコツ磨いて、積み上げていくのがいいんじゃないかな。経験したことは無駄にはならないと思いますよ。

もう一つの目指す姿としては、「後進を育てる」ことです。
今は森さんと自分のことを知ってくれている方が問い合わせしてくれてお仕事になることが多いですが、そうやって問い合わせをして下さる方と若手を繋いで新しい人間関係作りのハブになりたいなと。
会社としては経験者やその道のプロだけがいるベテラン集団ではなく、若い人・未経験な方も含めて組織として成長していく、強くなっていくことを目指しているんです。まだ経験が浅いメンバーや若いメンバーがより活躍できるようにサポートすることで、みんなで強くなって行けたらいいなと思っています。

ー読者のみなさまへの一言

「慌てず、焦らず」でいいんじゃないかな、と伝えたいですね。

マーケティングってなんかちょっとかっこいい感じもするし、お客様に”伝える”仕事でもあります。その中で、いろんな仕事・業務を経験することってとても大切だと思うんです。
僕自身がいろんな仕事を経験してきたこともあってジョブローテ推進派なんです。例えば、新卒の方で今「マーケティングをやりたい」と思っている人でも、すぐにマーケティングの部署に行く必要はなくて。営業や商品開発、総務やバックオフィス、いろんな部署を経験することで社会のことを知ったりとか、人脈を作ったりとか、仕事の流れを理解できますよね。
モノとかサービスを売ること・知ってもらうことにはいろんな見方があるので、いろんな部署で、色んな視点で経験を重ねることをお勧めします。

ー取材後記
今回はマーケティング支援・SNS運用支援で今注目のカラビナハート吉田さんにインタビューさせて頂きました。

一番驚いたのは、ご経験の多様さです。営業、編集、店舗接客など、その立場で無いとわからない”リアル”なご経験が、今のマーケティングの場面での基盤になっていらっしゃいます。たくさんの職種を経験することはなかなか容易ではありませんが、事業・商品・サービスを俯瞰的に見る、まさしく経営戦略により近い「マーケティング」の仕事だからこそ活かせるものでは無いでしょうか。

今後、カラビナハートさん、そして吉田さんが手掛けられる各社のマーケティング支援も楽しみですね。


カラビナハート株式会社
https://www.karabinaheart.com/
企業のマーケティングコンサル、SNSコンサル、ECコンサル、人材紹介、プロマーケター紹介、コミュニティ運営事業を行う。
全てのお客様をサステナブルな企業にするために独自性のある事業領域を展開。

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