マーケターに聞いてみよう!
Vol.10_コニカミノルタジャパン株式会社 富家 翔平さん

マーケターとして活躍されているみなさまに、ご自身の経歴やマーケティングに携わることになったきっかけ、お仕事をするうえで大切にしていることなどを語っていただく『インタビュー企画』。

第10回目は、日本を代表する電機メーカーの一つであるコニカミノルタジャパン株式会社の富家さんにお話を伺っていきます。


富家 翔平さん
コニカミノルタジャパン株式会社
マーケティングサービス事業部 MSマーケティング部 部長

大手テレビ通販会社のマーケティング、広告代理店のマーケティングコンサルタントを経験した後、コニカミノルタジャパンにてマーケター・プリセールスに従事。「営業プロセス改革×マーケティング推進」プロジェクトを牽引し、マーケティング組織の立ち上げを担う。
現在はマーケティング部 部長として、戦略的なマーケティング施策の実行による事業貢献に挑戦している。BtoBマーケティングやセールスをテーマにしたイベントやセミナー、メディアへの登壇実績多数。


キャリア選択のポイントは「自分を拡大できるか」で決める。

ーまずはご自身のご経歴を教えてください。
1社目は通販会社のマーケティング担当からキャリアがスタートしました。
そこではECサイトへの集客施策の企画・実行がメインミッションだったので、お客様に商品を購入いただくためのBtoCマーケティングを担当していました。ここでリスティング広告やデジタル広告の運用に携わりました。数字を見ながら特性を捉えて、数値を改善させる仕事がすごく面白かったんです。この領域をもっと極めたいと思い、広告代理店に転職しました。そこでもBtoCのお客様を担当するwebコンサルティングの仕事をしていました。

その後、広告代理店時代の知人に声をかけてもらったのがきっかけで、現職のコニカミノルタジャパンに入社しました。それまではBtoBマーケティングに関わったことはなかったので、新しい領域にチャレンジできること、マーケティング組織立ち上げ時期という貴重なタイミングだったことで、自分の仕事の幅を広げられそうだと感じたのが、転職を決めたポイントでした。
僕が入社した際、コニカミノルタジャパン自体も、ソリューションプロバイダへの変革にチャレンジし始めたタイミングでもありました。会社の変革をリアルに体験するのはなかなか経験できないですし、そういった機運からよりチャレンジしやすい環境が揃っていました。
また、勤務時間もスーパーフレックス(コアタイムがないフレックス制度)でしたし、当時からテレワークができる環境だったので、自分らしい働き方ができる、働きやすそうな会社だということもポイントでした。

"エンターテインメント"と"学び"を大切にお客様と向き合い、意見をぶつけ合うことでチームをまとめる。自分ごと化して伝えることの大切さ。


ー続いて、御社のサービス/富家さんが関わっているサービスについて教えてください。
僕が所属しているマーケティングサービス事業部の事業は、『デジタルマーケティング支援事業』『空間デザイン事業』『プラットフォーム事業』の大きく3つに分かれています。
30名強のマーケティングメンバーで、この3つの事業のマーケティングを担っている状況です。3名からスタートしたマーケティングチームでしたが、ここ1、2年で人数が大きく増えました。
この3つの事業は、ターゲットとなる顧客層も、抱えている事業課題もリソースも異なるので、やるべき施策も違います。それぞれの事業状況を把握し分析しながら、チームの状況に合わせて施策を考え運用していくということに注力しています。

当然ですが、事業ごとに商談化や受注までのリードタイムが異なります。実績から見るとおおよそ3ヵ月から半年の中には収まっている状態です。ですので、年度はじめにマーケティングプランを通年分作成し、半期ごとにリプランをかけていくという流れで、各施策の調整を図っています。

ー御社のマーケティング活動における特徴はありますか?
コンテンツを作る時に特に大切にしているのは、”エンターテインメント”と”学び”のバランスを考えることです。
この2つをうまく掛け合わせて、最後に自分たちの独自性を乗せていくということを大事にしています。例えば、お客様にとってどうか?という視点を抜きにして自社のソリューションやサービスを紹介してしまうのは、良くないです。受け取るはずのお客様をないがしろにし、自分たちが言いたいことだけを伝えてしまうことにつながるからです。
あくまでも、お客様には解決したい課題があり、この課題解決に繋がる情報を知りたいのです。お客様にとって役に立つ情報をお伝えした先に、自分たちのソリューションがあるという構造にすることが大切ですね。良いコンテンツを作るためには、売り込まれている感覚や広告色が強くなりすぎてしまっていると受け取られているコンテンツは、良いコンテンツとは言えないと思っています。

そのため、遠回りにはなりますが、お客様にとってわかりやすく受け入れやすい"エンターテインメント"と"学び"を織り交ぜたコンテンツになるように気を付けています。
僕は主に"エンターテインメント"担当なので、皆さまに受け入れていただきやすいのかな?と思っています(笑)

もう1つ大切にしていることは、『いろんな立場のメンバーの意見をぶつけ合うこと』です。
実践に必要なことは、意思決定者を明確にすること。そのうえで、それ以外の人に好き勝手に意見を出してもらうことです。
意思決定者が明確でないと、どんな意見が出ても決まりきらず、良い意見が出たのに、誰がボールを持っているのかわからないまま立ち消えになってしまうということもありますよね。
また、いろんな人が少しずつ責任を持っていると、それぞれ意見はあっても『この作業は時間がかかるからいやだな...』と自分の業務と結び付けてしまい、本当は必要な意見や突飛なアイディアが出てこないのです。

このことから、『意見は自由に言ってもらう。ただ、それを採用するかどうかは意思決定者が責任を持って決める』というルールで、いろんな立場のメンバーが自由に意見を言える環境を作っています。

このような意見を交わすマーケティングチームの定例MTGとインサイドセールスや営業も交えたMTGも定期的に行っています。それ以外にも課題ごとの分科会があったり、ソリューションの勉強会やノウハウシェアのための場も設けています。

マーケティングの組織が立ち上がってから5年目を迎えました。メンバーの数や組織、事業や施策の課題に応じて、MTGの頻度や開催内容を変えてきました。今はメンバーが30名を超えて、僕が全てのMTGに参加することが難しいので、各チームのメンバーや施策ごとの責任者に権限を委ねながら運営しています。
細かいところは任せることも増えてきた中で、先日、メンバーに、「細かいところまで把握しなくていいのですが、細かいところまで把握しようとする姿勢は見せてください!」と注意されてしまいました(笑)。
こんな意見をくれるのは、大事にしていることが浸透している証かもしれませんね。

お客様の本音を導き出すために必要なのは、自らボールを拾っていろんな人との関わりから経験を積んでいくこと。


ーご自身がマーケティングに関わる上で、大切にしていることは何ですか?
1番大切にしているのは「お客様が本当に欲しい情報を、良い形でかつ満足できるクオリティで提供する」ということです。
お客様が知りたい情報とこちらが伝えたい情報をうまくミックスさせる必要もありますし、『ウェビナーが良い』という方もいれば、『電話が良い』『訪問が良い』『メールが良い』など、お客様によって"受け取りたい形"も違うと思っています。
それと、キャッチーなタイトルがついたウェビナーでも、蓋を開けてみたら単なるサービス紹介だった...というような事も良くないと思っています。キャッチーなタイトルをつければ結果的にリードは取れるかもしれませんが、お客様のためにならないですよね。満足いただけるクオリティのコンテンツを提供するというところは、愚直に突き詰めていきたいですね。

もう1つは、『自分の役割に閉じた仕事をしない』ということも大切にしています。
解決しないといけない課題は明確なのに、『これは私の仕事じゃない』と、課題解決から逃げてしまうことはできます。ただそれでは、何も前に進まないですよね。僕自身は、『誰も拾わないボールを自ら拾って、整理して、あるべき場所に置いていく』ということを行ってきました。
そういう風に仕事をしてきたおかげで、いろんな人の立場や考え方に触れることができました。マーケティングはリードを獲得する起点となって、受注までつなげていくことが仕事だと思っていますので、自分の仕事を勝手に制限しないことで新しい経験を積むことができたかな?と思ってます。
これは、どの部署にも関わりにいけるマーケティングという役割の良いところかもしれませんね。

全体最適の観点で自分や自分たちがすべきことはなにかを考えながら仕事をしていきたいと考えています。

ーご自身が目指すマーケティングの姿について教えてください。
「LTV(Life Time Value)の最大化にチャレンジする」ということです。
お客様に提供できる価値が上がれば、LTVはもちろん上がっていきます。それにより、継続的に取引する期間が長くなるかもしれませんし、単価が上がるかもしれない。結果として粗利率が上がる可能性もあります。。。
そうやって利益をしっかりと確保できるようになれば、例えばお金のかかるテレビCMに出稿したり、社会的な意義を果たすためのボランティアイベントもできるようになるかもしれません。ひとりのマーケターとして、打てる戦略と戦術にも幅が出ると思っています。そのために、事業の構造や現状、利益から見たKGI・KPIの状況、施策の成果を数値化して捉え、ボトルネックを見つけて改善を重ねる。それを『自分自身が進めていくんだ』という強い意志を持って取り組んでいきたいと考えています。

これは生半可な覚悟じゃできません。他部門の課題に首を突っ込んだり、営業活動の細かい改善や、ご購入後のお客様満足度がどうなっているかまで、すべてを理解しようとする必要があります。マーケティングは経営であると言われますが、これがまさに経営視点なのかな、と思っています。経営視点で事業全体を見ていくことで、受注だけではなくて『自分たちの提供価値って何だろう?』とか、『コストをかける部分と業務効率化のバランスをどこで取っていくのか』などという視野の広い議論ができるのと思っています。
偉そうなことを言っていますが、まだまだ全然やり切れていないですし、今はただぼんやりと進むべき道筋が見えはじめている状況です。僕自身がこれにチャレンジして取り組みをシェアすることで、同じBtoBマーケティングに関わる人たちの背中を押せればなと思っています。

互いの理解と尊敬があるからこそ、自身にも真摯に向き合うこと。一人ではできないことを、チームで叶える楽しさを感じてほしい!


ー読者のみなさまへの一言
お伝えしたいことは2つあります。
まず1つ目は、『説明責任を果たす』です。
上司とか、周囲の関係者の方々に『マーケティングを全然理解してもらえない』とか協力的じゃないということはあると思います。そういう時に考えて欲しいのはそもそも『自分たちがやりたいこと、その目的などをきちんと説明できているか』を冷静かつ客観的に見ることです。意外にできていないのではないでしょうか?
僕の場合、やりたいことは全て資料に書き起こします。戦略や方針、ミッションなどで100ページ以上になることもありますが、口頭で伝えても伝わらないので、この資料を元に説明をしています。まずは相手に”ちゃんと伝える”ということを大切にして欲しいです。

2つ目は、『相互理解』です。
自分たちがかかわっている部署には、それぞれの仕事があります。目標も現在の状況も、組織という目線で見た時のテンションやコンディション、モチベーションなど・・。日々の仕事において、自分の部署以外のことは基本的にはノイズにしかならないのです。でも仕事自体は繋がっている。相手を理解しようとしていないことで起こってしまうことは、『あの部署は分かっていない 』『あの人は分かっていない』などという、発言が出てしまうことです。ほんの少し相手の部署の業務を理解することができれば、『確かに月末は忙しくなるから、その分こちらでフォローしよう』とか『手間のかかるこのフローが効率化できるように、システムを入れようか』と建設的な考え方に転換することができると思います。
お客様により良いものを届けるために社内が一丸になっていた方がいい。そのために、単に起こった事象だけを捉えるのではなく、お互いに歩み寄って、背景を理解しようとする姿勢を大切にしていただきたいです。


ー取材後記
今回は、日本を代表する電機メーカーの一つであるコニカミノルタジャパン株式会社の富家さんにインタビューさせて頂きました。

現職のコニカミノルタジャパンでは、マーケティング部署の立ち上げから組織化、複数事業を下支えする強固な体制作りまで、あらゆる方面からマーケティングの心臓部として大活躍されています。
一方で、冒頭の写真にもある通り、元気と笑顔がチャームポイントでもある富家さん。その明るい雰囲気と脅威なまでの前向きな姿勢が、周囲の方をどんどん魅了し巻き込み、大きな力を作っているのでしょう。

何かを成し遂げるとき、どうしても一人でできることには限度があります。
一人で叶えられるものは限られているからこそ、チームを大切にする志は大切にして行きたいですね。

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