マーケターに聞いてみよう!
Vol.14_株式会社しなやかに 飯田 夕紀子さん

マーケターとして活躍されているみなさまに、ご自身の経歴やマーケティングに携わることになったきっかけ、お仕事をするうえで大切にしていることなどを語っていただく『インタビュー企画』。

第14回目は、戦略コンサルタントとして、幅広い領域でマーケティングの実践的な支援をされている企業、株式会社しなやかにの代表 飯田さんにお話を伺っていきます。


飯田 夕紀子さん
株式会社しなやかに
代表取締役 戦略コンサルタント SBI大学院大学講師

大阪大学工学部卒業後、ユニ・チャーム株式会社に入社。R&D部門(商品開発・研究開発)にて、いくつもの新商品を世の中に送り出した後、マーケティング部門にて、主力事業であるベビーケア・フェミニンケア事業のブランドマネジメントに従事。ブランドの戦略策定から実行までを行い、縮小市場において2桁成長などを達成。その後は、ユニ・チャーム全事業横断のグローバル戦略の策定、中長期製品戦略の策定などに従事。戦略コンサルタントとして独立後は、新規事業の立ち上げや、企業の事業課題に対し顧客起点の戦略策定から実行までを支援するなど、幅広い領域における実践的な支援を行っている。


メーカーで鍛え上げたマーケティング術。色々な業界に携わってみたくなった、独立の道。


ーまずはご自身のご経歴を教えてください。

新卒でユニ・チャーム株式会社という消費財メーカーの会社に入社しました。

元々理系出身でしたのでまずは商品開発の部署に配属になり、約5年間、ラッキーなことに半年に1つ新商品を発表するという猛烈なスピードでたくさんの商品を世に送り出してきました。
その後、希望が叶いマーケティング部に異動しブランドマネジメントに従事しました。ただ、それまで全く触れたことのない領域の仕事でしたし、右も左もわからないのにいきなりPL責任も持たなくてはいけなくて、最初は必死にもがきながら日々を送っていました。めちゃくちゃ働いた数年間でしたが、さまざまな経験を重ねていく中で、縮小市場にある商材でも120%の売上とシェアアップを達成するなどの大きな結果も出せるようになり、マーケティングという仕事の幅や面白さを実感することができました。

また、グループインタビューや訪問調査などでお客様に直接お話を伺う機会も多くあり、その中で、担当していたブランドに対して「あのブランドは最近いいよね」「がんばってるよね」というお声を聞くことができ、自ブランドのことを好きになってもらうために一生懸命手がけてきたことが伝わった気がして、涙が出るほど嬉しかったのを覚えています。

当時は、商品開発部からマーケティング部への異動の前例がほとんど無く、交渉も大変だったのですが、熱意が通じたのか異動できたことは今も私のキャリアの大きな岐路だったと感じています。

ブランドマネジメントの後は、会社全体の戦略を作る仕事を担当しました。その当時で海外比率が6割を超えていたので、国内だけでなく海外も含めて、どの国でどのカテゴリーを戦略的に成長させて行くのかなどの様々な戦略に関わる仕事をしていました。

そんな毎日の中で、マーケターとして世の中を見渡すと、自社以外の商品やサービスにも目が留まり、『ここをもう少し変えたらもっと良くなるのに』『もっとたくさんの方に届くのに』とついつい考えるようになりました。そして、もっと色々な業界のマーケティングにも関わってみたいという想いが少しずつ強くなっていき、卒業を決意しました。

多くのことを学ばせてもらったユニ・チャームでしたが、どうせ卒業するなら転職ではなく思い切って独立してみたいという思いが募り、2015年に独立し、今に至ります。

プロジェクト型と顧問型。2つの支援スタイルでマーケティングの課題を解決する。

ー続いて、御社のサービス/飯田さんが関わっているサービスについて教えてください。

『株式会社しなやかに』では、戦略の策定を中心に、各種マーケティング施策の実行までのご支援を行っており、主に2つのスタイルをご提供しております。

1つは、事業課題に対し、こちらで戦略策定を請け負い、クライアント企業と伴走しながらプロジェクトを成功に導くご支援スタイルです。企業側がお持ちの情報やデータを共有頂き、戦略作りから施策実行までガッツリと入らせて頂いています。その際に顧客起点で戦略を考えるのに情報が足りなければ調査を行ったりもしますし、施策実行の際にはその時々で最適なチームを組んだり、必要に応じてマーケターの人材育成なども一緒にやらせてもらうこともあります。期間は、次期の商品に向けての短期的なものから、中長期のプロジェクトも含めて多様です。

そしてもう1つは、顧問としてアドバイスをするスタイルです。これはクライアント企業のマーケティングチームに対し、戦略立案時の壁打ち相手になったり、事業がうまくいくようにアドバイスをしていくという流れです。お請けするアドバイザー業務は、大企業のブランド戦略から中小企業の事業戦略まで様々です。

ー御社のマーケティング活動における特徴はありますか?

ポキッと折れないしなやかな戦略づくりを心がけています。『しなやかに』という社名はこれを表していまして(笑)

どんなに素晴らしい戦略を立てても、世の中の変化の兆しを見逃してアップデートせずにいると、機会を逸してしまう可能性があると思います。

ですから、世の中の動きを敏感に感じ取れるよう、アンテナを張り巡らせつつ、プランを柔軟に見直し、確実に実行していくことが大事だと考えています。

事業会社での実務経験があるからこそ、マーケティング担当者のお困りごとや難しさもわかりますので、実践的な支援をしていけるのも特徴の一つだと思います。

マーケティングの力で世の中をhappyに!悩んだ時は、どちらが"世のため人のため"になるのかを考えること。

ーご自身がマーケティングに関わる上で、大切にしていることは何ですか?

「お客様を”ちゃんと”見る」ということですね。

私たち自身、マーケターでもありながら”いち消費者”でもあるはずなのに、ビジネスの場面では急に”消費者=お客様”の感覚がなくなってしまう方が多いように思います。

お客様のことをちゃんと見ていたらこうはならないのではないかと思うこともあります。そういった場面に出会うと、「本当にもう1度ちゃんとお客様の声を聞きましょう」「現場を見に行ってみましょう」と原点に立ち戻ってもらえるようなアドバイスをしています。

ユニ・チャームでは、訪問調査をよく行うのですが、これは『実際にその商品がどういう場所で/どういった方に/どのように使われているのか 』などを調査するもので、実際にお客様のご自宅に伺って、使用しているシーンを見せて頂いたり、どういう価値観で生活されている方なのかなどインタビューさせて頂いたりします。

その際、家に入る前から玄関を通り、お部屋に入るまで、じっくり家の雰囲気を観察させて頂いていました。『こういう雰囲気の家に住んでいる方は、こんな商品を使っている』など、家から感じるあらゆる情報を徹底的に収集していました。この訪問調査によって、お客様にとっての日常から、いろいろな刺激を受けることができました。

このように、お客様のことを徹底的に考え、想像力を働かせることはとても大切です。『お客様も気付いていないようなお悩みが何で、それを解決するためにはどんな商品をお届けしたら良いだろう』と突き詰めて考えていくことで、本当にお客様のための商品を世に送り出すことができるのではないかと考えています。

もう1つ、私がクライアント企業を”支援する”という立場で気をつけているのは、組織のマーケティング力を向上できるようにすることです。

だから、「すぐに回答を求めるのではなく、自分たちで考えてもらう」ことを大事にしていまして、もし私がいなくても、その経験が知見として残り、マーケティングをレベルアップさせていく、それが組織の成長にも繋がると考えています。

ーご自身が目指すマーケティングの姿について教えてください。

「マーケティングの力で世の中をhappyにする」ことを実現したいなと思います。

ユニ・チャームでマーケティング部に異動になったばかりの時の上司に言われた言葉で、とても心に残っているものがあります。

マーケティング戦略にはいろんな選択肢があるので、それ故に悩むことも多かったのですが「悩んだ時は”どちらが世のため人のためになるか?”を考えれば簡単に答えが出るよ」と。

その言葉で腑に落ちました。「世のため人のため」をベースにしたマーケティングの思考がもっともっと広がると、みんながhappyになる世の中作りにも繋がると信じています。

ーご自身が目指す姿について教えてください。

ありがたいことに、独立したタイミングから色々な方からご相談を頂くことが増えていき、そういったご相談からの案件や、過去に案件をご一緒した方からさらにご紹介いただきお仕事になっています。

このようなご縁を土台にしているからこそ、お仕事でも深いお話やお互いに突っ込んだ提案もできるのかもしれません。これからも周りの方たちに感謝しながら、ご縁を大事にしていきたいです。

また、いろんな企業のお手伝いをしてきて、それぞれとても素敵なサービスなのですが、やっぱりどこかで『内側から事業自体のマーケティングをやりたい』という想いもあります。

元々事業会社にいたからかもしれませんが、自社の商品をお客様に届ける、そのダイレクトなフローにもっとしっかりと関わりたいなと思います。

これもご縁だと思うのですが、その想いを一つにできる企業があれば、ぜひ一緒にサービス作りをしてみたいなと思っています。

デジタル施策が溢れる今だからこそ、"お客様に喜んでもらえること"を考える。それをもっと楽しんでほしい。

ー読者のみなさまへ一言

施策から入るよりも、お客様を軸に考えてほしいなと思います。

デジタル施策が世の中に増えてきて、新しいものもどんどん出てきます。もちろん新しいものをしっかりと押さえておくこともマーケターとして大切なことです。

ただ、その施策に踊らされてしまって、例えば「とりあえずSNSはやっておかないと!」というように突然施策・手段に落とし込んでいることもあるように思います。

お客様を軸に、『どんなお客様に/どういうサービスを/どのようにご提供』すれば、それがお客様に喜んでもらえるのか。世のため人のためになり”happy”をもたらすことができるのか。

じっくりじっくり考えていくと、そのために何が必要で、どんな戦略になるのかをベースにした上で、SNSをやる方がいいのか、やるならどんな風にやるのか、などが見えてくると思います。

マーケティングは世の中の人に喜んでもらえたり、世の中を動かす力のあるものなので、考えることをもっともっと楽しんでもらえたらいいなと思います。


ー取材後記

今回は戦略コンサルタントとして、幅広い領域でマーケティングの実践的な支援をされている企業、株式会社しなやかに の代表 飯田さんにインタビューさせて頂きました。

強い想い、そして熱意から深く深くマーケティングに関わってこられた飯田さん。お客様の潜在的なお悩みにまでも想いを馳せ、まさにお客様と共に歩むマーケティングを実践されていらっしゃいます。

日々次々と新しい施策が生まれるデジタルマーケティング領域において、つい小手先の施策に目が行きがちになってしまいます。ですが、本来は誰のための施策なのか、本当の目的は何なのかを忘れないでい続けることが重要になってくるのではないでしょうか。

みなさまも、ご一緒にマーケティングを楽しみながら世の中を動かして行きませんか?

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