No.28_ロゼット株式会社 石垣 樹奈さん

 今回の『インタビュー企画』にご登場いただくのは、ロゼットで商品企画・マーケティングを担当する石垣樹奈さん。発売から26年を迎えたロングセラー商品「ロゼットゴマージュ」のリニューアルに取り組まれました。新たに20~30代のファンを取り込むため、TikTok動画や株式会社サンリオのキャラクターとのコラボキャンペーンといった新施策に挑戦している石垣さんに、リニューアルの狙いや意気込みをお聞かせいただきました。


石垣 樹奈さん
ロゼット株式会社
マーケティング部 マーケティング課 主任


化粧品会社でOEM商品の商品企画・営業に従事したのち、2021年4月にロゼットへ入社。ロゼットゴマージュおよび新規ブランドの商品企画、マーケティング、プロモーションの戦略立案を担う。


発売から初めての成分リニューアルに挑戦!

――石垣さんは2021年にロゼットへキャリア入社し、マーケティング部で活躍されています。改めて、現在の主な仕事内容を教えていただけますか?

ロゼットの主力商品の一つである「ロゼットゴマージュ」および新規ブランドの、商品企画、マーケティングおよびプロモーションに携わっています。

――マーケティングのみならず、幅広い業務に関わられているのですね。「ロゼットゴマージュ」は御社の製品の中でも非常に根強い人気があると伺っています。

ロゼットは1929年に日本で初めてクリーム状の洗顔料を販売した会社であり、「お客様の肌悩みを解決したい」というコンセプトで商品開発をしてきました。
「ロゼットゴマージュ」が登場したのは1998年のことです。「くすみ」「ザラつき」「ごわつき」という肌悩みから「角質ケア」に着目して開発されたブランドであり、当時のドラッグストアではあまりないめずらしい商品でした。今年(2024年)でブランド誕生から26年目を迎えます。

――その長い歴史を誇る「ロゼットゴマージュ」が、2024年2月からリニューアルされたと伺いました。リニューアルの経緯について教えていただけますか。

「ロゼットゴマージュ」はこれまでにも何度かパッケージのリニューアルを行ってきましたが、中身は同じでした。しかし、発売から25年という時間が経過するうちに、角質ケアの競合商品も増え、お客様のニーズも変化してきました。例えばお客様の口コミをリサーチすると、お風呂の中で角質ケアをしたいという声が多かったのですが、従来の「ロゼットゴマージュ」は濡れた肌に対応していませんでした。また、角質ケア製品を愛用されるお客様の多くは、同時に「毛穴」や「くすみ」といった肌の悩みを抱えていることもわかってきたため、新しい「ロゼットゴマージュ」では濡れた肌でも使える仕様に改良し、「毛穴」と「くすみ」という肌悩みに対応した2つの商品を発売することにしました。
毛穴悩みに対応するのが「ロゼットゴマージュ クリアピール」、くすみ悩みに対応するのが「ロゼットゴマージュ ブライトピール」となっています。

――新しい「ロゼットゴマージュ」のターゲットは、リニューアル前とは異なるのですか?

嬉しいことに、「ロゼットゴマージュ」は長年ご愛用いただいているファンが多く、リリース当時20~30代だった方々が、50~60代になった今もご利用いただいているケースが珍しくありません。一方で、今の若年層に対する浸透はやや遅れているという課題がありました。20~30代の新しいファンを開拓することも、今回のリニューアルの目的の一つです。

若年層をターゲットに、動画配信+株式会社サンリオのキャラクターとのコラボキャンペーンを実施

――「ロゼットゴマージュ」のリニューアルにあたって、パッケージデザインも変更されていますね。新しいデザインにはどのような狙いがあるのでしょうか。

従来の「ロゼットゴマージュ」も2種類の商品ラインがあり、イメージカラーはそれぞれ青と赤でした。これを、新しい「ロゼットゴマージュ」では毛穴悩みに対応する「クリアピール」を青、くすみ悩みに対応する「ブライトピール」は肌の色を明るくするイメージでオレンジを採用しました。また、「毛穴」と「くすみ」に効果があることに説得力を持たせるため、それぞれに含まれている「炭」や「ビタミンC誘導体」といった成分をパッケージに明記しています。

――商品がグレードアップしたことがよく伝わるデザインですね。商品リニューアルにはどのぐらいの時間をかけられたのですか?

配合成分を大幅に変更する内容だったので、安全性や肌への効果を確保するまでには何度も試作を重ねる必要があり、およそ3年かかりました。
その努力の甲斐もあり、自信をもってお勧めできる商品になったと思います!

――新しい「ロゼットゴマージュ」を広めていくにあたって、どのようなマーケティング施策をとられているのか、教えてください。

若年層のお客様にも「ロゼットゴマージュ」を知っていただくため、SNSを主軸としたプロモーションを企画しています。特に注力しているのは、TikTokでのプロモーションです。TikTokで若年層からの支持が厚いインフルエンサーを起用し、実際に「ロゼットゴマージュ」を使っている様子を撮影。ジェルがポロポロに変化して古い角質をからめとっていくところを見せることで、注目を集めたいと考えています。動画はこれから本格的に配信する段階ですので、どんな反響が見られるか楽しみですね。

――2024年5月には株式会社サンリオのキャラクターとコラボし、クロミとマイメロディの限定パッケージも発売されると伺いました。このコラボ企画の意図を伺えますか。

ここ数年、20~30代の消費者をターゲットとしたキャラクターとのコラボ商品がトレンド化しており、特にドラッグストアや雑貨店などの店頭商品では高い効果が出ています。株式会社サンリオのキャラクターを選んだ理由は、若年層を中心に幅広い年代から愛されていることです。これまで「ロゼットゴマージュ」をご利用になられたことがない方にも手に取っていただければと思っています。

――コラボ商品の制作にあたっては、どのような点を特に工夫されましたか?

まずは、「ロゼットゴマージュ」のオリジナルパッケージの色味を活かすことですね。例えばクロミはもともと黒い頭巾がチャームポイントのキャラクターなのですが、「ロゼットゴマージュ クリアピール」のテーマカラーである青をベースとした色味に変更させていただきました。マイメロディも同様に、「ロゼットゴマージュ ブライトピール」に合わせてオレンジ色で彩色しています。もう一つこだわったのは、「ロゼットゴマージュ」のシンボルであるお花のイラストをキャラクターのリボンに追加したこと。キャラクターの魅力を残しつつ、「ロゼットゴマージュ」のエッセンスをちりばめることができたのではないかと思います。

――コラボ企画と連動したプレゼントキャンペーンも実施されるそうですね。

はい。当社のXアカウントをフォローとリポストしてくださった方にロゼットゴマージュをプレゼントするキャンペーンを行います。
さらに、キャンペーンに当選した方の中で当選投稿や口コミ投稿をしていただいた方のなかから、抽選でオリジナルデザインのヘアクリップをプレゼントするというものです。

キャンペーン詳細:https://rosette.jp/Page/release/pdf/2024/rosette_release_20240322_rgm_collab_kuromi_mymelody.pdf

――プレゼントキャンペーンにはどのような狙いがあるのですか?

SNSの口コミから、多くの方に「ロゼットゴマージュ」のことを知っていただくことが目的です。今の若い人たちは、企業が出した商品広告を見ただけではなかなか購入に至りません。実際に使った人の口コミを検索して、納得できたら買うわけです。口コミを増やすためにも、まずはたくさんの方に使っていただき、話題感を醸成したいというのが、このキャンペーンの狙いですね。

徹底したリサーチでお客様の気持ちを知る

――石垣さんがマーケターとして大切にしていることはどのようなことですか?

商品企画においてもマーケティングにおいても、「自分だったらどんな商品がほしいか」という気持ちと、「お客様はどういう商品を求めているか」という客観的な分析の両方を大切にしています。今回の「ロゼットゴマージュ」のリニューアルでは、毛穴とくすみに対するケアが美容のトレンドとなっていることをリサーチした上で、新たにこの2つの機能を商品に追加し、プロモーションでもその点を訴求しています。また、「肌悩み別にアイテムを選べること」はもともとロゼットが掲げるコンセプトでもあります。会社やブランドの理念と、お客様のニーズが重なるポイントを探った結果、今回のリニューアルにたどりついたのだと思います。

――製品リニューアルや、SNSを活用した製品認知拡大に取り組んでいるマーケターに向けて、アドバイスをお願いします。

私自身も模索しながら仕事をしているので偉そうなことは言えませんが(笑)
とにかくお客様の気持ちを知ることを大切にしています。なぜ商品を買ってくださったのか、商品を使ってどう感じられているのか、そしてお客様がどんな悩みやご要望をお持ちなのか。担当ブランドの商品はいつも口コミサイトやSNSで確認し、自分自身でもSNSを活用しながらお客様目線で見れるように美容業界全体のトレンドも把握するようにしています。

――マーケティングには、すぐに結果が出るとは限らないという一面もあると思います。壁に直面したときには、どのように乗り越えられているのでしょうか。

もちろん、広告施策が思ったほど購入に結びつかない場合もあります。そういうときには思わず目をそらしたくなってしまうものですが、失敗を検証することで次の施策に活かすことが大事だと思っています。検証と取り組みを繰り返すことで、だんだん成功の確率は高まってくるのではないでしょうか。とはいえ、過去の事例にばかりこだわっていると、今度は新しいチャレンジができなくなってしまう。ときには前例のないことにもチャレンジして、新しい手法や考え方を大胆に取り入れることも必要だと思っています。今回の「ロゼットゴマージュ」のリニューアルでは新しいチャレンジがたくさんあり、とてもやりがいがありました。検証とチャレンジの両輪がマーケターの成長につながるのではないかと思います。


● 編集後記
26年の歴史を誇る「ロゼットゴマージュ」のリニューアルといえば、企業の経営にも影響する一大プロジェクト。しかし、終始明るい笑顔で取材に応えてくださった石垣さんから伝わってきたのは、プレッシャーよりもむしろ、新しい仕事に挑戦するやりがいや楽しさでした。自社の商品を心から愛し、それをお客様に広めたい。そのまっすぐな一念こそ、彼女の多彩なアイディアの源泉であり、インハウスマーケターに必須の資質なのではないか。そんなことを考えさせられる取材でした。

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