マーケターに聞いてみよう!
Vol.16_株式会社アトラエ 井端 康さん

マーケターとして活躍されているみなさまに、ご自身の経歴やマーケティングに携わることになったきっかけ、お仕事をするうえで大切にしていることなどを語っていただく『インタビュー企画』。

第16回目は、求人メディア「Green」を扱う企業 株式会社アトラエの井端さんにお話を伺っていきます。


井端 康さん
株式会社アトラエ
マーケティング

2012年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、新卒としてアトラエに入社。
求人メディア「Green(グリーン)」のマーケティングを中心に、ブランド戦略策定・UX戦略企画・デジタル/マスメディア統合プロモーション施策の推進・プロダクト機能企画などを担当。
その他にも、Greenのポッドキャスト”グリテンラジオ”の運営とパーソナリティも担当。
また、出社時はほぼ毎日コーヒーを淹れて社員に配っており、コーヒー片手にチームメンバーとの雑談を楽しんでいる。


入社の理由は"ワクワクしたから"
今でも変わらず、面白く楽しく働けている環境

ーまずはご自身のご経歴を教えてください。

2012年に大学卒業後、新卒採用でアトラエに入社しました。そこからGreenに配属され、これまで11年弱さまざまな業務でこの事業に携わっています。
入社時はエンジニアとして、その半年後からマーケティングを担当しています。ずっと少人数でやっていて、ここ3,4年くらいで2,3人に増えたかなという感じです。

新卒でアトラエを選んだ決め手は、”一番ワクワクしたから”です。ちょうど僕が大学を卒業する前年にFacebookがサービスとして立ち上がるまでをストーリーにした「ソーシャル・ネットワーク」という映画があって、これにとても感化されまして。それまではあまり働きたくないなと考えていたこともあるのですが(笑)、こんな仕事ならやってみたいなと感じました。こんな面白いことを仕事としてやれるなら、これほど刺激的なことは無いなと。。そこから20名前後の少人数で事業を運営している企業に絞って、就職先を探し始めました。
ただ、20名前後の会社は、新卒採用をしていないことが多くて、自分で調べて勝手に履歴書を送る手法でアタックしていました。その後説明を聞いていく中で一番ワクワクしたのがアトラエでした。

「世に無いものを生み出していくんだ」という高揚感はもちろん、社員のみなさんが楽しそうだったのがとても大きかったですね。
いろんなベンチャー企業の話を聞いていると、もちろん社長はみなさん優秀ですし、お話もお上手です。ただ、アトラエは社長だけでなく社員の方と話す時間も多く、座談会形式でお話した時も、社員同士の盛り上がりが凄くて。この感じがとてもナチュラルでいいなと、この人たちとこの勢いで仕事ができたら面白いだろうなと思いました。

今も色々な仕事に関わっていますが、やはりいずれも面白く楽しく働けていると感じています。

急拡大する注目の転職サービスGreen。必要に応じたチーム作りと情報格差を最小限にすることが成功の秘訣。

ー続いて、御社のサービス/井端さんが関わっているサービスについて教えてください。

会社の軸になっている事業のGreenという転職サービスのマーケティングを担当しています。
担当領域をざっくり分けると、デジタル広告とオフライン広告の2つです。

Greenというサービス自体がWebサービスということもあり、デジタル広告はやはり外せない施策ですね。広告配信やSNS対策、自然流入の強化などを行っています。
オフライン広告では、テレビCMや電車広告の全体的な計画と意思決定、ディレクションを包括的に担当しています。

アトラエの特徴の一つだと感じているポイントとして、プロダクト開発にマーケティングチームも関わっている点です。他の企業だと、マーケティングはプロモーションを中心としてプロダクト側にはあまり関与しないのではないでしょうか。
例えば、どんな画面でどのようなUIにするとか、ユーザーの体験全体としてどういう方向性に持っていくかという議論や、具体的な施策の提案、プロジェクトを改善するプロセスにも積極的に関わっています。

あと、半分趣味のような取り組みですが(笑)、Greenのポッドキャスト”グリテンラジオ”の企画運営とパーソナリティーも担当しています。

御社のマーケティング活動における特徴はありますか?

大きく3つあります。

まず1つは、「部署先行というよりも、事業運営における必要性に応じて業務で部(チーム)化する」ことです。

事業の特性やサービスの広がり方はフェーズによって変わってくるので、それぞれのフェーズで必要があればマーケティング担当者を置き、そうでない場合は置かないという体制をとっています。これはマーケティングに限ったことではなく、他でも同じように変容性があるスタイルですね。

2つ目は、「意思決定の大きさ×スピード」です。
アトラエには役職がありません。それは意思決定のあり方にも大きく影響していて、本当に必要となったらその権限を認められた予算内で、基本的にはその場で判断して進めます。ですので、意思決定のスピードがとても早いです。そもそもベンチャーは意思決定が早い傾向がありますが、ここまで現場に決定権を持たせている社内構造は珍しいのではないかなと思っています。

3つ目は、「メンバー間の情報格差が少ない」ことです。
秘匿事項など特定のチームだけで管理する情報は一部はありますが、それ以外は全てメンバー全員が共有できるようになっています。ですので、施策の取り組みの意図や戦略、その結果も公開しています。それぞれの部署で閉じずにメンバーみんなが関わり合うことを大切にする中で、やはり情報はとても大切で、その情報をもとに違いを指摘したり議論したりというのが日常茶飯事です。指摘に全て対応するわけではないですが、新しい視点・違う視野で見た時に気づくこともたくさんありますね。
組織の体制をお話する時にスポーツを例にするのですが、アトラエは野球というよりはサッカースタイルかと思います。野球はポジションが明確ですが、サッカーはそのタイミングによって動き方が変わっていきますよね。まさにその感覚で、事業の方向性や注力するものによって、メンバーみんなが流動的に必要な業務を担当しているという印象です。

情報共有に関しては、社内のシステムを活用するのはもちろん、リアルな場でのコミュニケーションも大切にしています。リモートワークの日もあるので毎日ではないですが、一緒にランチに行って話すことも多いですね。柔らかい雰囲気の中で話せますし、お互いに構えずに相談できるので、積極的にみんなを誘っていますよ。

わかりやすい表現で発信するから助けてもらえる。
"軍師"としての役割を意識して勝率を上げ、もっと事業を成長させたい。

ご自身がマーケティングに関わる上で、大切にしていることは何ですか?

先ほどもお話したようにメンバーみんなで関わりながら事業を進めていく上で、『分かりやすく伝える』ことを大切にしています。

メンバーが互いに興味を持ちながらいろんな施策に関わる。これはアトラエというOSの強さかなと思っていて、他の企業での再現は難しいかもしれません。
その分、誰が聞いてもわかる内容に落とし込んで発信するようにしています。特にマーケティング領域は、専門用語や略称、前提知識が必要なことが多いので、できるだけ日常的に使う言葉に噛み砕き、興味を持ってもらえるように表現するようにしています。
その方が、みんなに助けてもらえるんですよね。以前発信していた施策について「この雑誌に参考になりそうな記事が出てましたよ」とか、一応みんなの頭の中に入れておいてもらって、何かあったら教えてもらうというやりとりも結構多いです。

一方で、個人の能力にあまり依存しすぎないようにしているという面もあるかもしれません。今は経験豊富なメンバーも増えていますが、僕が入社した当時のアトラエは若い年代のメンバーが多くて、社員の平均年齢も20代後半でした。その若い組織が、人材採用のサービスを運営していくには、人生経験もスキルも足りないと痛感することが多くて。みんなで情報を共有して融合して影響し合うことによって、その足りない部分を会社全体で補完できていたのかもしれません。

もう1つは、『事業成長の上で一番重要で難しい意思決定を自分が引き受ける』ことです。
戦で例えると”軍師”だと考えていて、その役割を常々意識しています。
例えば、事業を運営していくと、今のターゲットの方々にフォーカスし続けていくと維持はできるけど次のステップに上がれないという局面があるとします。そんな時は、ターゲットを変えて新たな領域に踏み出して行かないといけない。ただ、中長期的には必要な一歩でも、短期的には売上が下がってしまうことがあります。でもそこを経ないと5年後はない。こういう判断をしたがる人はあまりいないわけです。怖いし、難しいし、面倒くさい(笑)。そういうところにできるだけ自分が積極的に関与するようにしています。他の人が気にしなくても働けるような状態にすることが、長期的にサービスを成長させてユーザ様から信頼を勝ち取っていくために貢献できることかなと。僕が関わることで勝率を上げて、みんなが報われるような状態にできればと考えています。

ご自身が目指すマーケティングの姿について教えてください。

マーケティングに限定した話ではないのですが、「自分が関わっているサービスの社会的価値を高めていきたい」。そのために何ができるかなというのはいつも考えています。
サービスの社会的価値が高まること自体が、個人的にもめちゃくちゃ面白くて。それをずっとやってきたし、これからも続けたいなと思っています。

もう一つは「この人の言うことだったらなんか楽しそう」と思ってもらえるような、ソフトの部分を高めていきたいですね。信頼感というか、人柄というか、そういった部分が長期的に事業を成長させる上で極めて重要な要素になっていくんだろうなと感じています。
今、どんどん新しいサービスが生まれていて、その中で何が当たるかを判定するのはとても難しい状況になっていると思います。先ほどもお話した”軍師”として勝つための意思決定をし続けていくことは大事だし今後も必要ですが、その中でどれくらいメンバーの力を引き出せたかどうかというソフト面こそが勝ちの可能性を高めるのではないか、今後の価値が高まっていくんじゃないかと思っています。メンバーや人材をいかに熱狂させられるか、そこにチャレンジするためには信頼して話を聞いてもらえる人間になりたいなと思います。

会社としては、まずアトラエという会社やGreenをもっともっと多くの方に知って頂けるようにしたいです。会社の規模って社会的影響の規模感とリンクすると思っていて、多くの方に届けるには、もっともっと事業を伸ばしていきたいですね。
現在アトラエは100名程のメンバーがいるのですが、その人数が増えてきた時にも今と同じようなアトラエらしさを保っていけるようにしたいです。事業規模や人数が増えても、価値観を広く共有できるアトラエらしさは大切に、メンバーみんなでポジティヴなコラボレーションを創出していけたらと思います。

マーケティング成功のコツは、メンバーから協力を引き出せるか。企業文化をうまく活用して早いタイミングで信頼関係を構築することが大切。

読者のみなさまへの一言

マーケティング業務は企業文化をもろに受ける領域だと感じています。一つの部署で完結することはないですし、できるだけいろんなメンバーから協力を引き出せる方が成功の可能性を高められることが多い。
そうなると、その「企業文化をうまく活用していく/適応していく」ことが大切だと思います。

具体的に言うと、企業文化の中で、”一番人から協力を引き出しやすい形に徹すること”でしょうか。他メンバーから「あいつは話を聞いてくれる、理解してくれる、まともにやりとりできそうだ」という信頼関係をどれだけ早いタイミングで構築できるか。この信頼関係ができれば協力の幅が増えて動かせる規模も大きくなりますし、勝つための閾値を超えられる水準に到達しやすくなると思います。

たくさんの協力・手助けを束ねて、自分の限界を超えていく。そのためには相手に寄り添い、ハブになって結びつけていくということを意識されてはいかがでしょうか。


取材後記

今回はスタートアップから大手DXまで幅広い採用を支援しIT/Web系の経験者採用に特化した転職サイト「Green」を運営する株式会社アトラエの井端さんにインタビューさせて頂きました。

部署にとらわれず、必要な業務を軸にありたい姿に変容する柔軟な組織構造は、かなり特徴的だったように思います。業務に閉じず、全員が関わり合い絡み合う体制は、他者への興味と寛大な器を持つ、アトラエのカルチャーが大きく関わっているようです。
これを下支えしているのが、各メンバーがより動きやすい体制作りに心を砕く井端さんのような存在なのでしょう。戦略を立てて道筋を形作る、その軍師としての役割こそが、組織全体の融和と急激な拡大成長の後押しになっているのかもしれませんね。

チームとして勝つための、部署に閉じない仕事だからこその他者との関わり方、改めて見直してみてはいかがでしょうか。

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