No.23_ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 浦崎 里奈さん

マーケターとして活躍されているみなさまに、ご自身の経歴やマーケティングに携わることになったきっかけ、お仕事をするうえで大切にしていることなどを語っていただく『インタビュー企画』。

第23回目は、ヘルスケア商品を扱う企業 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の浦崎さんにお話を伺っていきます。


浦崎 里奈さん
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
マーケティング本部/ディレクター

慶應義塾大学法学部法律学科卒。新卒でP&Gジャパン合同会社に入社。
入社2年目でシンガポールHQに異動し、ファブリックケア事業部にて、柔軟剤ブランドの戦略策定、新製品・コミュニケーション開発を担う。ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社に入社後、リステリン史上最高の市場シェア獲得を達成し、No.1ブランドとしての地位を確立。Warc Media Awards grand prix受賞のスニ活キャンペーンや、ベスコス多数受賞 VC100ローションの新製品開発を経て、マーケティング本部長に就任。全ブランドの売上その収益責任を負い、E2Eのマーケティング戦略・実行を通して、ブランド価値向上、ビジネス成長を担う。


『最初から最後まで』マーケティングに関わる上で大切にしたいこと。

ーまずはご自身のご経歴を教えてください。

外資系の企業でマーケティングとしてのキャリアを積んでおり、最初のキャリアは2011年に新卒で入社したP&Gジャパン合同会社でした。
就職活動では他の外資系企業、例えばコンサルティングや投資銀行も受けていましたが、インターンシップに参加した際に圧倒的に楽しくて。実際に消費者に向けてコンセプトを作って、それにフィードバックをもらい、製品作りに活かしていくという流れの”手触り感”が印象的でした。自分のアイデアや想いに対して消費者がすぐにレスポンスをくれて、ブランドを作るという”やりがい”を感じられる仕事だなと思い、迷わず入社を決めました。
2年目からシンガポール勤務となり、アジアをターゲットに仕事をしました。いわゆるリージョナルの仕事がメインで、多国籍なメンバーと共に日本では味わえないような経験をたくさんさせていただいたと感じています。

その後、日本への帰国を考えたタイミングで、現在のジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社に転職しました。
マーケティングの軸で、「end-to-end」(最初から最後まで関われる)であること、そして日本という場であっても責任を持てることを大切に選定しました。これは外資企業によく見られるのですが、マーケティング施策に本社の意向が色濃く出てしまい、支社ではほとんどその施策立案や計画に携わることができない場合があります。
それよりも、ちゃんと「日本でどういう製品が必要とされるのか、売れるのか」を、日本の現場から声を挙げて作っていける環境で働けるところが決め手でした。

現職では、日本を含めたローカルのメンバーから、幅広い視野で企画・立案・提案・実施を責任持って運用できます。
例えば、先日発売した「リステリン®トータルケア 緑茶」は日本独自の商品ですし、こういった商品開発においても独自の色を出していけるのは嬉しいですね。

やる気やスキルを重視して仕事を任せる。
若手にも裁量を渡すことで、環境が人を育ててくれる。

ー続いて、御社のサービス/浦崎さんが関わっているサービスについて教えてください。

ジョンソン・エンド・ジョンソン コンシューマー ヘルスはヘルスケア商品をメインに扱っています。リステリン、バンドエイド、スキンヘルス保湿剤、ベビーケア、OTC医薬品の5つのカテゴリーがあります。私は、その5つのカテゴリーにおけるマーケティング施策の全体統括を担当しています。
それぞれのカテゴリーに専任の担当者がいて、それ以外にもサポートのメンバーがおり、マーケティング組織全体では、15名程です。商材の種類に対して考えると、少数精鋭の部隊ですし、若手メンバーが多い組織だと思います。

大きなブランド、例えば国内でマウスウォッシュ売上No.1のリステリンを今年の新卒メンバーが担当していたり、年齢問わず、その人の成長機会や得意なことを重視して任せています。
キャリアの最初からいかにオーナーシップを持てるのかという点が人の成長には大きく関わると思っていて、それ故に若手メンバーにもどんどん任せています。会社としては大きな組織ですが、自身で徹底的に考えて・企画して・動いていく、そしてビジネスの結果にコミットするという点においては、スタートアップのような働き方とも言えるのではないでしょうか。

私自身、転職した際にやりたいと考えていたことの150%は達成できているかなと思えるくらい、本当に幅広い仕事ができています。
広告クリエイティブを考えて作ることはもちろんですが、パッケージデザインやプロモーション施策も、全て日本の消費者のニーズやインサイトを第一に考えて、展開できるんです。まさに「end-to-end」で関わることができるからこそ、チャレンジしてみて上手くいったこと・上手くいかなかったことを自身で深く認識できますし、それを次の施策に活かしていくことができる。ですので、転職してからの6年間をかけて、あらゆる企画・施策を磨き続けることができたかなと感じています。

分かりやすく、日本に適した表現を。
生活に近い商材だからこそ”伝える”ことの大切さを意識したい。

ー御社のマーケティング活動における特徴はありますか?

まず一つは、「ヘルスケアの商品を扱っている」ということです。

私たちは保湿剤のカテゴリーを「スキンヘルス」と呼んでいるのですが、『ヘルス』とあるように『人々がより健康な生活を送る』ことを目指しています。これは全てのブランドに共通することです。このミッションを達成するために、プロダクトのポリシーや効果には本当にコミットしています。

例えば、リステリン(マウスウォッシュ)ですと、口腔内菌の99.9%殺菌や他疾患への効果なども報告されています。日本では薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の規制により表現が制限されてしまいますが、世界では高い効果を謳っています。
その規制の関係で、日本国内でのプロモーションは表現を工夫する必要があって、そこが腕の見せ所かなとも感じています。技術的に素晴らしいことを伝えるのはもちろん、お客様の視点で直感的にわかりやすい情報でないといけません。その創意工夫こそが、特徴的なポイントだと思います。

もう一つは、ローカライズの徹底です。
日本のお客様に対して何が必要なのか、何をお伝えできるのか、本当に真摯に考え続けています。例えば、新製品の3年後に向けたブランディングのような中長期の課題から、今日Twitterに何を投稿するかという目の前の施策まで、多岐にわたります。

日本のマーケットの特徴としてもう一つ大きなことは、各商材の世の中への浸透率がまだまだ高くない点です。リステリンのようなマウスウォッシュは、自社で調査したところ、日本での利用率は30%程度ですが、アメリカでは60%と、比較的習慣化されています。この利用率をあげていく、つまり習慣や文化を作っていく・開拓していくのが、日本ならではのポイントだと感じています。急に利用率をあげるのは難しいと思いますが、そのうちの1%が動くだけでも大きな変化になっていく。文化を作る、市場を変える、という高い視点での思考は、弊社ならではかなと感じています。

ー ご自身が目指すマーケティングの姿について教えてください。

日本を起点にもっと色々なことにチャレンジしていきたいですね。
例えば、日本発のアイデアや製品をもっともっと世界に発信していきたいです。

今年の春まで私がマーケティングを担当していた「ドクターシーラボ」というブランドがあり、それは実は日本発のブランドです。
その日本発のブランドを、中国や他の国でローンチするにはどうしたらいいのか、どうしたら中国のお客様に買っていただけるのかということを徹底的に考えていました。クリニックのお医者さんたちと製品開発をしながら、中国の消費者に日本発のブランドの魅力をどう伝えられるのか、プロモーションの表現方法にも気をつけていましたね。

日本の消費者は非常に厳しく、高品質・高効果な製品を求めているので、そのような消費者にも受け入れられる製品・アイデアを、今後も日本から発信していきたいですね。


得意をみつけるために、理想の自分や環境を細分化して考えてみることがおすすめ!

ー 読者のみなさまへ一言

まずは、楽しいこと・得意なことをキャリアにして欲しいなと思います。
人生の時間、1日の時間の7割くらいは仕事をしていますよね。楽しいことじゃないと続かないですし、良いパフォーマンスを出せないと思うからです。そのためには、自分が何を楽しいと思えるのか、何が得意なのかという点を掘り下げていただくといいのではないかと思います。

その次に、その楽しく感じること・得意なことが発揮できる環境に向き合っていただきたいです。
楽しみながらパフォーマンスを出していく上で、環境ってとても大切だと感じていて。私自身、新卒の就職活動の際に感じていた”楽しいこと”を突き詰めてきたので、この10年でキャリアを積み重ねてこれたのかなと思っています。そして、その環境についても、できるだけ細分化してみてほしいです。

例えば、マーケティングといっても、幅がとても広いですよね。私が新卒で社会に出た時よりも、テクノロジーの進歩によってさらに広がっているように感じます。ブランディングや製品開発、CRM開発からデジタルマーケティング、顧客獲得のためのパフォーマンスマーケティング、そして店舗でのリアルマーケティングもあります。そこから業種の掛け合わせも含めると、もっと広がっていきますよね。
このように、同じ「マーケティング」と言っても、企業や業界、そこで求められるものによって定義が全く異なるので、より細かく分解して具体的に把握しておくことが大切です。それに応じて、自分が求める姿・環境のためにはどんなスキルセットが必要なのか、そのスキルを身につけるためにはどうしたら良いのか、徹底的に考えてみてほしいです。

私の場合は、ブランドのビジネスを伸ばすことを目的に、自分が得意とするマーケティングという手段で業務に貢献できることが好きなので、PL責任を持ち、事業を進行していくところを強みにしてきました。

こんな風に細分化することで、どんな会社で、どんな業務で力をつけていけるかを考えてみてはいかがでしょうか?


取材後記

今回はヘルスケア商品を扱う企業 ジョンソン・エンド・ジョンソンの浦崎さんにインタビューさせていただきました。

印象的だったのは、ご自身の”やりたいこと”と”得意なこと”を徹底的に突き詰めていらっしゃっていたことです。
みなさんはキャリアを考える時、自分自身のことなのに”やりたいこと”と”得意なこと”を悩んでしまったり、見えづらくなってしまうことはありませんか?特に社会経験が少ない方は、一層悩まれるポイントかもしれません。

「好き」を徹底的に分析するからこそ見えてくる、”やりたいこと”と”得意なこと”。改めてご自身を振り返りながら、経験や想いの棚卸しをしてみてはいかがでしょうか。

関連記事

TOP