マーケターに聞いてみよう!
Vol.2_株式会社ファーストアセント 千葉 祐大さん

マーケターとして活躍されているみなさまに、ご自身の経歴やマーケティングに携わることになったきっかけ、お仕事をするうえで大切にしていることなどを語っていただく『インタビュー企画』。

第2回目は、注目のベビーテック(赤ちゃん関連テック)企業、株式会社ファーストアセントの千葉 祐大さんにお話を伺っていきます。


千葉 祐大さん
株式会社ファーストアセント
取締役 CMO

「子育て支援事業」をライフワークとしており、2020年はBabyTech(ベビーテック)を中心に「テクノロジーとコミュニティで子育てをより楽しく」を掲げて活動中。
現職は、株式会社BabyTech&Community 代表取締役CEO、及び株式会社ファーストアセント 執行役員CMO。他、株式会社グースカンパニー 取締役など複数企業を兼務する複業/トライセクター(パラレル)ワーカーでもある。
プライベートでは、「日本愛妻家協会」や「一般社団法人Papa to Children(PtoC)」等、複数のコミュニティに所属。育児セラピスト1級の認定講師でもある。


自身の経験から生まれた、子育て環境を改善したいという想い

ーまずはご自身のご経歴を教えてください。

実家が子供服の事業をやっており、元々子育てに関わる事業に関心を持っていました。
その子育て事業によりコミットするようになったのは、自分のライフステージの中で娘2人が生まれたことで、長女の時に約7ヶ月、次女の時に約2ヶ月の育休を取得させてもらい、自分なりに子育てを始めて当事者として向き合ってきました。
その時に初めての子育てで戸惑うことが多く、その環境をなんとかしたいと思ったことがきっかけです。
子育ては社会的にも重要な課題であるにも関わらず、構造的にリスクマネーが流れてきにくく、新しいサービスや企業が腰を据えて取り組みにくい側面があると感じた時に、テクノロジー(手段)とコミュニティ(人との繋がり)で僕自身はライフワークとして生涯をこの領域にコミットして解決したいなと考えたのが今のベビーテックに繋がる根幹かもしれません。

ベビーテックというキーワードは、2016年のCES(※1)での発表が初めてと言われています。
このタイミングでこれまでライフスタイルテックの中の一部であった領域(IoT家電やスマートホームのような)が、初めてCES内でベビーテックサミットというカンファレンスが開催されました。

ファーストアセントとの出会いは、2020年1月のCESでした。
その当時は個人で会社を立ち上げて子育て支援の事業を展開していましたが、同様に子育てに関する事業を扱っている身としてファーストアセント代表の服部と出会い、その後もCES2020の帰国後の報告セミナーなどを一緒に活動していました。
僕自身も焦ってはいなかったですが、自社でエンジニアを雇って自分でサービスを作って行きたいとは思っていたんです。
ファーストアセント自体は、服部含めて全員当時はエンジニアが100%の社員構成の会社で、技術的には秀逸なもののプロダクトを世に広げるといういわゆるマーケティング的な領域に専門で取り組んでいる社員がいない状況でした。
そのタイミングで、何か一緒にできたらいいねという話を頂き、僕はマーケティングというか事業拡大させていくという役割でジョインしました。

「テクノロジーで子育てを変える」という理念が近かったのもありますが、お互いの想いややり方の擦り合わせを確認するために、まずは業務委託として一緒に仕事をやってみて、よりお互いの考え方やビジョン、価値観を確認した上でで正式ジョインしたという形でした。

設立当初からの技術力と共同研究により得た、優位性の高いサービスの構築

ー続いて、御社のサービス/千葉さんが関わっているサービスについて教えてください。

ファーストアセント代表の服部自身が大手メーカーの研究職としてキャリアスタートしており、彼自身もエンジニア兼データサイエンティストでもあり、また、彼と一緒に過去に働いていたエンジニアメンバーを中心に2012年に創業した会社が徐々に大きくなっていきました。
こういう事業において、ベンチャーの割に技術力を評価頂く機会が増えてきたんですが、これも服部をはじめ当初からのサービスを立ち上げ成長させてきた技術力と、そこに蓄積されてきた膨大なデータの影響が大きいかなと感じています。ファーストアセントは、国立成育医療研究センターと2017年から共同研究(※2)をしており、2013年から展開する育児記録アプリ「パパっと育児」を通じて、膨大な育児ビッグデータという非常に信頼度の高い情報があるんです。こういうデータが元に無いとどんなサービスも浅いものになってしまいますよね。
この事業は、信頼できるデータと研究が基盤となっている事業であるため、参入障壁や競合優位性も構築しやすいモデルであるとも感じています。

ー御社のマーケティング活動における特徴はありますか?

ここ最近は特にメンバーも強化されてきたかな、という印象がありますね。

元々エンジニアリング力が強い組織基盤に加えて、多様性のあるメンバーが集まってきたのが当社の特徴の一つかと思っております。
例えば、助産師・看護師の資格を持つメンバーが正社員にいたりですとか、英語が堪能で海外子育て経験のあるメンバー、外国籍で広告運用のスペシャリストなど、社内にマーケティング業務に限らずさまざまなお仕事において業務委託のメンバーにも多く活躍してもらっています。
その中でも育休中のとても優秀なママさんたちに活躍してもらっていることは特徴の一つです。
稼働される期間や頻度も人それぞれなのですが、非常に優秀でや好奇心旺盛で積極的な方が多いというのもあり、ファーストアセントのこの事業においてサービスの中心にあるママさんたちそのものがサービス作りを一緒にしてくれるということ、一緒に情報発信をしてくれるということは、まさに生の声をそのまま活かせるというのはマーケティング観点において望ましい環境ですよね。
実際に育休中の関与から始まり、その後も当社の仕事を業務委託でお手伝いをして活躍してくれているメンバーも複数人いるんですよ。サービスのファンになってもらい実際にサービスを作るお手伝いをしてもらって、そこから働き方を柔軟に選択して当社に関わって頂けるのは、マーケティング観点や組織づくりの観点においてもこの1年間で作り上げられた特徴だと思っております。

多様なメンバーだからこそ叶う、顧客に寄り添える”チーム”マーケティングを実現したい

ーご自身がマーケティングに関わる上で、大切にしていることは何ですか?
少し説明が重複しますが、組織力がマーケティング力に反映されると思っていて、その組織作りは常に意識しています。
一人一人の能力向上は前提として重要ですが僕自身がいくら頑張っても時間的な制約もありますし、それよりもいかに優れた組織を構築するのかが、マーケティングにおいても重要だと考えています。イメージとしてはオーケストラの指揮者みたく、演奏者としても強みは持っておきたいですが、大事なのは束ねられる能力や必要な人材をアサインできる能力だと考えています。

例えば、「年齢」という観点で考えてみた時にも、自分自身もそうだし、創業メンバーも比較的40代が多いという組織的な特徴があります。
その中で当社のサービスユーザーである「子育て世代」を考えた時に、これからのママ・パパさんは20代〜30代の若い方々が多くなります。もちろんいろんな情報やツールのキャッチアップは個人としては日々利用するようにはしていますが、やっぱりその年齢の当事者じゃないと分からない感覚ってあると思ってます。いつも自分の感覚を過信しないようにはしており、戦略・戦術は自分自身で構築してますが、具体的な施策のディテールに関しては当事者に近い人と一緒に立案したり実行したりするように心がけております。

ーご自身が目指すマーケティングの姿について教えてください。

そうですね、大きく2つあります。

まず一つ目は、いわゆるマーケティングで有名な方々が語る「n=1」のマーケティングや、「パーセプションフロー・モデル」という考え方をもっと日々のマーケティングの業務に落とし込んでいきたいですね。
ファーストアセントとして、今はようやくマーケティングが組織としてできてきたなという感覚はあるんですが、そこに戦略的なマーケティングの思考がインストールできているかというとまだその段階ではないんです。
なので、次へのステップとしてメンバーと理想のマーケティングの組織にその戦略を反映していったら、強い組織になるだろうし、どこまで跳ねるんだろうという楽しみがあります。

次に、”興味がない人にいかに伝えるか”ということですね。
ベビーテックのこの事業に対して良いものだと感じてくださる方も多いですし、興味を持ったり、必要としてくださっている方もいらっしゃるんですが、世の中的に考えるとまだ今の時点では国内においてはマジョリティではないんです。
ベビーテックの認知度の問題やこれまで子育てをしてきた世代間ギャップの問題などが複合的に絡んでおり、今すぐにベビーテックを活用しようという人は日本国内では多くないのが現状です。(海外では状況が違ったり、近い未来には変わる可能性は十分にあると考えています)

自分自身としてはすごく大切で必要なサービスだと思っているのでぜひ世の中に大々的に伝えたいんですが、実態としてのまだ「マジョリティではない」という現実と、マーケティングというやりとりの中でどう折り合いをつけていくか。
例えば、大規模な投資を行うタイミングをどのフェーズで実施すべきか、イノベーターやアーリーアダプターと一緒にどうやってキャズムを超えていく道筋を作るかなどはポイントになってくるかなと思います。

「世の中を変える」「ベビーテックを浸透させる」という動きとしては、政府や大手企業を巻き込んで活動もしていますよ。
もう一つ加えると、海外の方がベビーテックが進化しているので海外の事業展開や海外のベビーテック企業の動向にも注目しています。
ただ、どうしても育児の習慣が国によって異なるので、日本流のベビーテックの広め方はいつも考えていますね。
日本の子育て現場に対して、常にユーザーの声を聞ききながら”誰にサービスを届けたいのか”は大切な点です。「子育てにテクノロジーを活用する」などと聞くと、ママ・パパの中では抵抗感やピンと来ない方もいらっしゃるのが現状ですので、未来に寄せすぎずに少し先の1.5歩先くらいの未来感を常にユーザーの声を聞きながら提供していくことを意識しています。

※1 CES:毎年1月に全米民生技術協会(Consumer Technology Association、CTA)
が主催し、ネバダ州ラスベガスで開催される電子機器の見本市。業界向けの見本市で、一般への公開はされていない。展示会には多くの新製品が出品され、プロトタイプ(試作品)も多い。(wikipediaより引用)
※2 ファーストアセント、国立成育医療研究センターとの共同研究の成果が、米国医学雑誌『The Journal of Pediatrics』でオンライン公開 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000023831.html

ー取材後記
今回は、techで育児を変革するという注目の「ベビーテック」業界を牽引するファーストアセントの千葉さんにインタビューさせて頂きました。

自身のリアルな経験があるからこそ生まれた「改革の”芽”」を育んでいる千葉さん。しかしそこに驕らず、未来に向けてチームの力を集結し世の中を変えていこうとする姿は、マーケティングの枠を越え、組織運営・組織改革の粋が集約されているように感じました。
既に海外では産業界の注目領域の一つでもある「ベビーテック」。これから千葉さんが起こす日本での大きな波、ぜひ引き続きウォッチしていきたいですね。


株式会社ファーストアセント
https://first-ascent.jp/
IoTのサービスの企画・開発およびコンサルティングを行っています。 「ディープラーニングなどの機械学習による予測モデルの作成」「メディカル・ヘルスケア関連データの分析」「企業の広告費用のROI最適化」などの経験を活かし、データ解析による新たな価値の創出のお手伝いを致します。

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