No.21_フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社 鶴 ゆみさん

マーケターとして活躍されているみなさまに、ご自身の経歴やマーケティングに携わることになったきっかけ、お仕事をするうえで大切にしていることなどを語っていただく『インタビュー企画』。

第21回目は、日本でも人気の車“ゴルフ”や“ポロ”を輸入・販売する企業 フォルクスワーゲン グループ ジャパンの鶴さんにお話を伺っていきます。


鶴 ゆみさん
フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社 フォルクスワーゲン ジャパン
広報 ・マーケティング本部 マーケティング コミュニケーション課 シニア マネージャー

神戸市出身、父親の仕事の関係で中学よりNYに15年間在住。
日本興業銀行米国法人 NY支店、米系証券会社、ビー・エム・ダブリュー株式会社(BMW Japan)を経て、フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社に入社。
フォルクスワーゲン ジャパン 広報 ・マーケティング本部 マーケティング コミュニケーション課のシニア マネージャーとして広告販促活動全般を担当。


アメリカで過ごした日々と経験から繋がった、異業種への転身

ーまずはご自身のご経歴を教えてください。

父の仕事の関係で中学生の時にアメリカ・ニューヨークに渡米しました。大学院までの学生生活をアメリカで過ごし、そのままアメリカで就職しました。
最初は、日本興業銀行米国法人に就職し、退職後、日本に帰国してアメリカの証券会社に勤務しました。
その後、BMW Japanに転職し7年勤務しました。2010年からは、現職のフォルクスワーゲン グループ ジャパン 株式会社で勤務しています。

金融から自動車業界という異業界での転職については、金融ではずっと営業をしており、世界の動きや誰かの発言によって為替が変動するなど、大きな動きがあることで非常に刺激的な日々を送ることができました。
しかし、次第にそういった変動要素が大きい仕事ではなく、形があるものに関わっていきたいなと考えるようになりました。

そのタイミングでBMW Japanからお声をかけていただき、営業職として転職しました。海外での就職経験があり英語が堪能であることがポイントだったようで、別業界ではありましたがトントンと選考が進んでいったことを覚えています。
また、人生の半分を車社会のアメリカで過ごしたこともあり、自分にとっても車がとても身近なものだったことも、自動車業界への転身に大きな違和感はなかったように感じています。

当時、フォルクスワーゲンでは、”コンパクトカー”のイメージが強かったのですが、ラグジュアリーセグメントも攻めていこうとしていた時期でした。その際に、女性視点かつラグジュアリーセグメント経験者を投入し、マーケティングを強化したいという考えもあり、声を掛けていただきました。
私自身も、これまでは営業職に携わっていましたが、異なる面からお客様にアプローチできるマーケティング職への興味が非常に強かったので、マーケティングという新しいチャレンジができる現職への転職を決意し、今に至ります。

お客様が欲しいと思える情報を、チームで共有してメッセージを発信する。会社としての判断を形にすることがマーケティングの醍醐味の一つ

ー続いて、御社のサービス/鶴さんが関わっているサービスについて教えてください。

フォルクスワーゲンの商品プロモーション全般を担当しています。
マーケティングに携わるのが初めてでしたので、今でも勉強の日々ですね。

昨年、体制が変わって、それまで別々だったPRとマーケティングが一緒になりました。
その中で、ATL※1、 BTL※2、デジタル、イベント、リサーチ、CRMの運用といったマーケティング全体を見ています。
10名ほどのチームで、その他に派遣やインターンの方も交えた組織体系です。

施策を計画するときは、コアメンバーで議論して広告代理店等とチームで進めていきますが、具体的な作業はそれぞれ個人が担当者として担っていきます。
ただ、担当別になると、集中して専門領域の業務に取り掛かることができる一方で、どうしても自分の視界だけの閉鎖的な思考にもなりやすいので、週に一度、全員で集まる共有会を実施しています。全ての施策の進捗確認やクリエイティブチェックを行い、進めている業務が施策全体の方針とズレていないか、また他の人の業務からヒントを得ることができないかなどの擦り合わせが目的です。

お客様にお伝えしたいこと・知っていただきたいことは、たくさんあります。ただ、それがお客様にとって関係性のあるものなのか、欲しいと思っていただける情報なのかを冷静になって考えて整理するのはとても大切だと考えています。自分の考えはもちろんですが、チームのメンバーと話し合って、会社としての判断を形にする。これはマーケティングという仕事の特徴でもあり、醍醐味の一つでもありますよね。

コーポレートブランディングと併せて、新領域のプロモーション強化へ。電気自動車がもたらす新しい世界を、お客様と一緒に創り上げていきたい

御社のマーケティング活動における特徴はありますか?

フォルクスワーゲンの大きな特徴としては、他の輸入車メーカーと比較して、ブランド名よりも車種名の方が先に名前が挙がることが多いことです。
その要因の一つには、コーポレートブランディングよりも車種ごとのプロモーションを行ってきた流れがあります。
国産車に近いプロモーションと言いますか、車種ごとにテレビCMなど、認知型のマーケティング施策を中心に実施していました。

近年は、デジタルによるターゲティング広告を中心に展開していましたが、Yahoo!やNewsPicksなどのトップページで広告配信するなど、ブロードリーチメディアも多く活用し、広告展開をしています。

年内に電気自動車のローンチを予定していて、現在そのプロモーションの準備をしています。これはフォルクスワーゲンとしても非常に重要なプロダクトで、プロモーションにも力が入っています。
電気自動車に関しては、グローバル的にも大きな流れですし、そこに私達もどのように取り組んでいくのか、どのようにお客様にお伝えしていくべきなのかというのは、とてもチャレンジングなことと感じています。
お客様にお伝えするには社員の私達自身が電気自動車をよく知らないといけない、そして電気自動車の優れた点を実感しなければいけないということで、全社でオフサイトの試乗会や勉強会も実施しました。やはり、リアルに触れて乗ってみないと分からないこともたくさんありますね。
そういった学びを得たからこそ、お客様が情報を収集しやすい環境を準備することが重要と考えました。私たちフォルクスワーゲンの商品というよりも、電気自動車そのものに関する質問・疑問・お悩みを解決して、一歩踏み出していただけるような新しい形のウェブサイトを作る予定です。こちらも年内には公開を予定していますので、ぜひ楽しみにしていてくださいね。

ご自身が目指すマーケティングの姿について教えてください。

私達の社名でもある「フォルクスワーゲン=ピープルズカー」の意義を多くのお客様に知っていただきたいなと考えています。

フォルクスワーゲンの考える「みんなのための車」とは、デザインやクオリティもしっかりと担保した上で、1台の車に4-5名がちゃんと乗れて、荷物も積めて、遠出・移動ができる、価格帯も高すぎない。そういった効率性もありながら、毎日に寄り添う車です。毎日ご利用頂くことを軸においた車作りをしているということ、そんなブランドであることを、改めてお伝えしていきたいと思います。

ブランドのイメージに対してご意見をを聞くと、まだそういった点をご存知ではない、ドイツの大衆車?と思われる方が多くいらっしゃるので、私たちは今まで何をお客様にお伝えしていたんだろうと反省します。
現在の50代以上の方にとっては、フォルクスワーゲンは憧れの象徴でした。ビートルのオープンカーにサーフボードを詰め込んで…という西海岸のイメージ。彼らにとっては、ビートルに馴染みがありますが、プロダクト寄りの情報発信をしてきたことで、会社としてのブランド認知は少し弱かったかもしれません。ですので、ブランド認知的な要素と、合わせてプロダクトの発信も引き続き力を入れていきたいと思っています。
フォルクスワーゲンはそのパフォーマンス、クオリティ、機能の面からもとてもバランスが良い車だと思います。
一度ブランドに共感し、商品を好きになってくださった方はフォルクスワーゲン車を何台も乗り継いでくださることが多く、大変感謝しています。
ビジネスとしての基本ですが、既存のお客様としっかりコミュニケーションを取り、さらに新規のお客様にもいかに接触し、フォルクスワーゲンファン層を拡大していくことは、マーケティングミッションというだけではなく、フォルクスワーゲンブランドに関わる全員のミッションだと感じています。

一つの何かをやり遂げる・"作る"ことに捉われない・自身の視点を大切に

読者のみなさまへの一言

お伝えしたいことは3つあります。
まず1つ目は、「石の上にも3年、ある一定程度までは、一つの何かをやり遂げること」です。

今は時代も大きく変わって猛烈なスピードであらゆるものが進展していきますので”3年”も必要ないかもしれませんが、初めてのものに触れて、勉強して身につけ、根底にあるものを知り、物事を見極めるには、中長期的な視点が必要だと思います。ちょっとやってみて、辛いからすぐ辞めようではなかなか身につきませんよね。区切りをつけるとしても、一つのものを何かやり遂げてから。そうでないと、何も残らないし、これからの自分のためにもならないと思います。

2つ目は、マーケティングを担当している方にお伝えしたいことですが「作業員にならないこと、単に”作る”ことだけにとらわれないこと」です。

何かを計画したり作り上げていくとき、そこには必ず常に”何のために作っていて””誰がこれを見ていて””誰が何を知りたいのか”、そういったことも全部考えた上で進めていくのがとても大切です。広告代理店の方などとお話をする時にも、そういったことが念頭にないと、より良いものに仕上がりません。日々の業務に捉われるとついつい作業っぽくなってしまいがちですが、あくまでもそれは中長期的に見た大きな目的を達成するための手段の一つであるということ。それを忘れないように毎日を過ごすことが大切だと思います。

そして3つ目は、女性の皆さまにお伝えしたいことです。

ジェンダー問題とかそういう話とは全く別の次元での話として、私は、やはり女性の視点は大切にしてほしいと思います。

これからの時代、すべてのモノづくりに女性の視点は重要だと思いますし、さらにはそれらをどう販促するのか、女性の意見はマーケティングにおいてもますます欠かせない要素だと思っています。ダイバーシティ―への理解が進む中、今こそ女性視点を取りいれ、より面白くかつ効果的なコミュニケーションが実現できると考えます。
後はご自身の視点や意見をしっかりと論理的に説明できる知見、経験を重ねてどんどん力にしてほしいと思います。一緒に素敵な世界を作っていきたいですね。頑張りましょう。

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※1 ATL Above the Lineの略/広告を取り扱う際のメディア分類の用語の一つで、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌のマスメディア4媒体(いわゆる4マス)を指すことが多い。主に、認知やコミュニケーションを目的としたメディア広告施策が該当する。

※2 BTL Below the Line の略/広告を取り扱う際のメディア分類の用語の一つで、OOH や折り込み広告、DM、POP、イベントといったセールスプロモーションメディア、販促施策を指すことが多い。主に、興味関心の向上や購買喚起を目的とした広告や販促施策が該当する。

ー取材後記

今回は日本でも人気の車“ゴルフ”や“ポロ”を輸入・販売する企業 フォルクスワーゲン ジャパンの鶴さんにインタビューさせて頂きました。

各キャリアごとにご活躍されていらっしゃる鶴さん。じっくりとお客様視点で考えること、さらに一貫したメッセージングの大切さを教えて頂きました。
そして、マーケティング施策や企業ブランディングに関してはもちろん、ご自身の生き方や仕事への向き合い方においても強い軸をお持ちでいらっしゃいます。その溢れ出るパワフルさ、柔軟さで、あらゆる現場のメンバーのみなさまを魅了し牽引されているのでしょう。
常に前向きでポジティブなスタンス、そして難題をも切り拓いていく強さ。毎日の中で、ぜひ心がけていきたいですね。

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