【NewsTV社内研修レポート】Cookieとオープンインターネットの現在地

 これからのデジタル広告を語る上で、Google ChromeのサードパーティCookieのサポート廃止とプライバシーサンドボックスは避けて通れない話題です。
今回、NewsTVの社内研修にアタラ株式会社の杉原さんを講師に迎え、サードパーティCookieやオープンインターネットなど、デジタル広告に与える影響、変化、新たな手法をなどを詳しく解説していただきました。
※この研修は2024年6月5日に行われました。そのため更新されていない情報が含まれます。

講師紹介
アタラ株式会社
代表取締役 CEO
杉原 剛(すぎはら ごう)氏

Google ChromeのサードパーティCookieのサポート廃止の背景

Google Chromeは、ユーザーのプライバシーを守るためにサードパーティCookieのサポートを段階的に廃止する予定です。サードパーティCookieは、ウェブサイト間でユーザーの行動を追跡するために使用されるCookieです。これにより、訪問者の情報を使って広告を出すことができました。
このCookieの廃止は、個人情報の保護を強化する一方で、広告業界にとっては大きな課題となっています。従来、広告主はサードパーティCookieを利用して、ユーザーの興味や関心に基づいたターゲティング広告を配信してきました。
しかし、プライバシー保護の観点から、サードパーティCookieの利用に対する規制が強化されてきました。これに対応するため、GoogleはChromeにおけるサードパーティCookieのサポート廃止を決定しました。この変更により、広告主やマーケターは新たな方法でユーザーにリーチする必要があります。
※2024年7月22日(現地時間)、Googleはこれまでの方針を転換し、サードパーティCookieのサポート廃止を見送る新たなアプローチを発表しております。詳細はアップデート予定。

プライバシーサンドボックスとは?

 プライバシーサンドボックスは、Googleが提案する新しい技術的なフレームワークであり、サードパーティCookieのサポート廃止後に広告の効果的な配信を可能にすることを目指しています。このフレームワークは、ユーザーのプライバシーを保護しながら、広告のパフォーマンスを維持するための一連のAPI(Application Programming Interface)で構成されています。

具体的には、以下のようなAPIが含まれています。

  1. Topics API
    ユーザーの興味・関心に基づいて広告を配信するためのAPIです。このAPIは、ユーザーのブラウザ内で興味に基づいたデータを保存し、必要なときに取り出して広告配信に利用します。これにより、ユーザーのプライバシーを保護しながらも、効果的なターゲティング広告が可能になります。
  2. Protected Audience API
    従来のリターゲティング広告に代わる新しい方法を提供します。このAPIを使用することで、広告主はインタレストグループを作成し、特定の興味を持つユーザーに対して広告を配信することができます。これは、従来のリターゲティングリストに近い機能を持っていますが、ユーザーのプライバシーをより強化しています。
  3. Attribution Reporting API
    広告の効果測定を行うためのAPIです。このAPIは、従来のCookieを使用した効果測定方法とは異なり、ユーザーのプライバシーを保護しながらも、広告のパフォーマンスを評価することができます。

プライバシーサンドボックスは、ユーザーの個人情報を保護するために、広告配信に必要なデータをブラウザ内に閉じ込める仕組みを採用しています。これにより、広告主はユーザーの行動を追跡することなく、効果的な広告を配信することが可能になります。
しかし、現段階でのプライバシーサンドボックスは、仕様が流動的、Googleの情報提供不足、広告主の無関心などからテストが進んでおらず、「今のプライバシーサンドボックスは、衝突テストが済んでいないのに車を買うようなものだ」と提言している人もいます。

Googleの発表でも、『2024年の第四四半期中にサードパーティCookieの非推奨化を完了させるつもりはない』とされており、サードパーティCookieのサポート廃止やプライバシーサンドボックスの正式利用がいつ実現されるのかは決定しておらず、唯一言えるのは、Google ChromeのサードパーティCookieはどこかでなくなるであろうということのみです。
今は、その時に備えておくことが大切だと言えます。

サードパーティCookieのサポート廃止による影響と運用型広告の今後は?

 では、サードパーティCookieのサポート廃止による影響はどの程度あるのでしょうか?
広告管理画面の設定や機能が変わるのか、気になっている方もいるかと思いますが、プライバシーサンドボックスはDSP/SSP/プラットフォームが開発に活用するものなので、ユーザーである広告主の管理画面への影響は少ない見込みです。
一方で広告効果に関しては、プライバシーを重視する分、Cookieを使用している現在と比較すると広告効果が落ちる可能性は高いと考えられます。
また、ファーストパーティーデータを多く保有するウォールドガーデンは今後有利になるか気になる方も多いと思いますが、これに関しては、ウォールドガーデンやリテールメディアが広告予算面では有利になるといえます。大量かつ優良なファーストパーティーデータを保有しているプレーヤーに予算が寄せられるということは十分に考えられることなので、TikTokやInstagramなどで広告配信を行うという広告主は多くなる可能性があると考えていた方がよいでしょう。

オープンインターネットの課題と対応策

 サードパーティCookieのサポート廃止は、オープンインターネットに大きな影響を与えます。従来のCookieを使用したターゲティング広告は、ユーザーの行動を追跡することで効果的に行われていました。しかし、プライバシーサンドボックスの導入により、広告主は新しい方法でユーザーにリーチする必要があります。
この新しい環境では、ユーザーのプライバシーを保護しながらも、広告のパフォーマンスを維持するために、広告主は以下のポイントに注意する必要があります。

  1. プライバシー保護を最優先にする
    ユーザーの個人情報を保護するために、新しい技術や方法を積極的に採用し、プライバシー保護を最優先に考える必要があります。プライバシーサンドボックスのAPIを利用することで、ユーザーのプライバシーを守りながら効果的な広告配信を行うことが可能です。
  2. 技術的な知識をアップデートする
    プライバシーサンドボックスの導入により、新しい技術や方法が次々と登場しています。広告主やマーケターは、これらの技術的な知識を常にアップデートし、最新の情報に基づいて広告戦略を立てる必要があります。
  3. 効果測定方法の見直し
    従来のCookieを使用した効果測定方法は、プライバシーサンドボックスの導入により使えなくなります。新しいAPIを活用し、ユーザーのプライバシーを保護しながらも、広告のパフォーマンスを正確に評価する方法を見つける必要があります。

オープンインターネットの利点と戦略

オープンインターネットは、ブランドが広範囲にわたってストーリーを伝え、潜在顧客の認知度を効果的に向上させる場を提供します。Criteoの調査によると、ユーザーの約70%が重要な購買前にオープンインターネットの記事を参照しています​​。これにより、潜在顧客へのリーチを広げ、ブランドの露出を高めることが可能です。

さらに、オープンインターネットは広告配信において優れた透明性とコントロールを提供します。ウォールドガーデンとは異なり、広告主は自社の広告がどこに掲載され、誰がそれを見ているのかを正確に把握できます。これにより、データに基づいて効果的なアプローチを特定し、キャンペーンの最適化が可能です​​。

オープンインターネットは、消費者が長時間オンラインで過ごしている場所であり、ショッピングジャーニー全体でエンゲージする機会を提供します。また、プレミアムコンテンツに焦点を当てることで、ブランドの安全性も確保されます​​。これにより、ブランドは適切な場所で、適切なターゲットに効果的にリーチすることができ、長期的な関係構築と成果の向上を実現します。

このように、オープンインターネットを活用することで、透明性の高い広告戦略を実現し、広範なオーディエンスにリーチすることができます。これにより、ブランドの認知度向上と持続的な顧客関係の構築が期待できます。


 今回の研修では、Google ChromeのサードパーティCookieのサポート廃止の動きとプライバシーサンドボックスの導入について詳しく解説していただきました。
広告業界にとって大きな変革のタイミングとなりますが、セミナーでお話いただいたことを参考に、これからのデジタル広告戦略においてパフォーマンスを維持するための取り組みを進めていくことが重要となりそうです。
NewsTVでは、プライバシー保護の観点の対応をケアしながら、今後も自社の広告配信プラットフォームをアップデートし対策と対応を進めて参ります。

このセミナーを視聴したい方は下記よりご視聴いただけます。

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